小鉢ひろかの旬だより

No.5 ”クセがない”食材はどう料理する?ズッキーニの味の描き方

夏野菜として定番になってきたズッキーニですが、以前母から「ズッキーニを頂いたけど、食べたことなくて困っている」と電話をもらったことがあります。

それもそのはず。ズッキーニは1980年代に日本にやってきた新野菜。他国では500年以上の歴史がありますが、日本での歴史は浅く、外食の少ない母にとっては馴染みのない野菜だったのでしょう。

「ズッキーニ」はその見た目からもきゅうりにそっくりなので、きゅうりの仲間だと思われがちですが、実はかぼちゃの仲間。「ズッキーニ」という名前もイタリア語で、「小さなかぼちゃ」という意味です。

味がない!?ズッキーニの魅力とは

ズッキーニは未熟な実を食べる野菜です。そのため、完熟したかぼちゃに比べると糖類やデンプンが少なく低カロリー。味はあっさりとしていて、みずみずしく、皮ごと食べても苦味やクセもない。食べやすい反面、ズッキーニは味がないと表現されがちです。淡白な野菜はどう調理すればいいのでしょうか。

淡白な食材は「味がない」と表現するのではなく、「どんな料理にも使いやすい」と考えましょう。真っ白なキャンバスに絵の具の色を重ねていくように、ズッキーニに自分好みの味を重ねていくのが正解の考え方です。

絵を描くとき、絵の具の重ね方は様々です。油絵のように強い色を重ねる、水彩画のように繊細に細かく重ねる、水墨画のように同色に濃淡をつけて余韻長く重ねていくなど…。

料理も同じく味の重ね方は様々。今日は絵を描くように、ズッキーニの魅力を最大に仕上げていきましょう!

ズッキーニの味の描き方

油絵のように、ガッツリと強い味を重ねてみましょう。例えば、ズッキーニの麻婆豆腐、ズッキーニのカレー、ズッキーニの味噌炒め。ベースの調味料の旨みを吸わせ、淡白なズッキーニを主役にまで引き上げることができます。

水彩画のように、繊細な味を重ねてみましょう。例えば、ズッキーニのピクルス、ズッキーニの揚げ浸し、ズッキーニのナムル。淡白な味には、旨みを足すと滋味深い味に着地します。旨みとは、カツオや昆布、鶏ガラ、コンソメなどの「ダシ」もそうですが、油味という旨みもあります。揚げ浸しにしたり、バターやごま油で炒めたり、油のコクが加わることでも、繊細な味に深みが出て、薄味でもほっとする一品ができるでしょう。

水墨画のように、濃淡をつけて味を重ねてみましょう。実はズッキーニは生でも食べられる野菜です。旬の6~8月(初夏)に出回る新鮮なズッキーニで試してみるのがおすすめ!ビタミンCやカリウムなどの水溶性成分は、生食のほうが損失が少なく栄養的メリットも豊富。イタリアのシチリア風にレモンと合わせ、ズッキーニのカルパッチョはいかがでしょうか。少々の塩(写真は塩麹)に、オリーブオイル、レモンの皮をすりおろせば、酸味と旨み、ズッキーニの食感が重なり合い夏の前菜にぴったりに仕上がります。

個性がないという個性。ズッキーニは万能野菜

どんな料理にも使いやすいという魅力の他に、ズッキーニは低カロリーという良さもあります。さらに、β-カロテン、ビタミンC、カリウムなどの栄養素も豊富。体型が気になる時の傘増し食材として大変優秀な食材です。

市場には、糖質オフ、低カロリー、食べても太らない魅力的な商品が溢れていますが、野菜はこれらの魅力に加え、ビタミンやミネラル、食物繊維など体の調子を整える栄養素がたくさん。罪悪感の罪滅ぼしにダイエット食品を食べるより、野菜でカラダを満たしてみてはいかがでしょう。

千切りにしたズッキーニに、カレー粉を混ぜ、オリーブオイルで焼き上げたズッキーニガレット。通常じゃがいもだけで作ることの多い料理ですが、ズッキーニでもおいしくできるんです。通常よりカロリーも糖質も抑えられ、ビタミンも豊富にとれる。野菜をたくさん食べるとは、体重の減少だけでなく内側の綺麗を作る良さもあるんです。

ズッキーニは淡白な野菜ですが、どんな料理にも使える万能食材。低カロリーで夏のダイエットにもおすすめの食材です。なすやきゅうりと同様に、夏の定番野菜としてスタメン野菜に組み込んでみてはいかがでしょう。

 

次回の特集は「モロヘイヤ」。大好きな野菜です、楽しみ。

また来週の月曜日朝6:00にお会いしましょう。

 

小鉢 ひろか 副菜料理家/管理栄養士

instagram: https://www.instagram.com/kobachi_hiroka/

 

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