東京都のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・冷凍生活アドバイザー1期生の増田智子です。
今回は「野菜の急速凍結実験&冷凍セミナー@おいしい冷凍研究所」というイベントについてご紹介します。講師は「冷凍王子」としてメディアでも活躍中の西川剛史さんです。
会場は「おいしい冷凍研究所」という「株式会社えだまめ」が運営する急速冷凍機付きのテストキッチン。私は西川さんが講師を務める「冷凍生活アドバイザー」の資格を取得しましたが、改めて勉強して確認できたことや体験して初めてわかることがあり、実り多いイベントでした。
今回は「野菜の急速凍結実験」ということで、生産者、野菜ソムリエ、レストランキッチンで働く方、食品卸販売の方、冷蔵庫の開発をされている方など、様々なご職業の方が参加していました。
おいしい冷凍研究所には2種類の業務用急速冷凍機があります。
「エアブラスト冷凍機」
エアブラスト冷凍機は冷気を直接食品に当てて冷凍する方式で、急速冷凍機の主流です。見た目は大型のオーブンのようですね。
分厚い扉を開けると目に見えるほどの白い冷気がさーっと流れ出てきました。下の部分がエアコンのようになっていて、冷気を上へあげて食品を冷やすそうです。これほど大きくても業務用としては小型のもので、大型の冷凍食品工場などで使っているものはベルトコンベアータイプで流しながら冷凍していくもの、大型のエアコンで冷気を送って部屋全体がエアブラスト冷凍機になっている超巨大なものもあるそうです。
ブライン冷凍機はアルコールや塩水などの凍らない液体を冷やし、その中に食品を漬けて冷凍する方式。外から見ると業務用の横型冷凍庫のようですが、開けてみると中には液体で満たされています。
こちらでは消毒用アルコールを使っています。「少しなら触っても大丈夫」と言うので、参加者みんな触ってみていました。私も指を入れてみてヒヤッとしましたが、自分が凍る!と感じるほどではありません。
しかし、内部はマイナス30度!
マグロなどの魚や肉など、真空パックに入れても形が壊れないものはこちらが向いているそうです。
早速、参加者が持ち寄った野菜や果物を急速冷凍機の中に入れて実験。食材によって適切な冷凍方法が異なるので、どちらが合うのか2つに分けていきます。
さすが!野菜や食に興味ある方々が持って来られた食材。どんな風に冷凍されるかとても興味がわいてきます。
・エアブラスト冷凍機へ入れたもの。
直接冷気を当てるので、冷凍装置に入れば形の崩れなど気にしなくて大丈夫。ただ、風の調節などやや扱いが難しい面もあるそう。
同じブロッコリーでも、
(1)さっとゆでてから冷凍
(2)そのまま冷凍して解凍時に茹でる
どんな差が出るのでしょうか?
私は憧れの冷凍みかんを作ってみたくて温州ミカンを持参しました。どうなるでしょうか?そのほか、ゆでたアスパラガス、生のアスパラガス、もやし、ビタミンダイコン、リーフレタスなど。
こちらは茨城県常陸太田市栗原農園の栗原玄樹さんがもってこられた小ねぎ。真空パウチに入れ、機械にセットします。
業務用なのでしっかり空気を抜くことができますが、空気の抜き方も80%や90%など調整することもできます。ブライン冷凍機は真空パウチが必要となってきますが、パウチと不凍液がフィルムごしに密着するので扱いやすく、効率よく冷凍できるそうです。
このままアルコール液の中に沈めていきます。
そのほかには、ゆでたジャガイモ、生のジャガイモ、菊芋、ゆでタケノコ、ビタミンダイコンなど。
約30分後。さて、どんなできあがりになったでしょう?解凍調理実験の開始です。
家庭でもさっとゆでてから冷凍するのが当たり前だと思っていたのですが…生のまま急速冷凍した後にさっとゆでたものが美味しかった!という意見が多かったのです。見た目は先にゆでたものに劣るのですが、味は元の状態に近くみずみずしい味がしました。
最近では急速冷凍するならばブランチング(先にさっと火を通すこと)をしなくてもいい場合もあるとか。家庭ではできない「急速冷凍機」の実力を感じました。
こちらもびっくり!急速冷凍機から出てきたもやしは、カラカラと細いガラス棒がぶつかるような音をしていましたが…凍ったままさっと炒めて、塩コショウしただけのもやし炒め。まるで生のもやしを炒めたような食感です。
冷凍した小ねぎに出汁を入れたスープ。色もよく、シャキシャキとして甘くておいしい!こちらも冷凍とはなかなかわからないと思います。小ねぎ生産者もその反応を見て大変喜んでいました。
冷凍みかん&イチゴはとても美しくおいしくできました!一見生とは見た目が変わりませんが、想像と違ったのは食感がサクッととした歯ごたえで噛み切れること。氷を噛むような、歯が痛くなるような食感ではなかったのです。
かき氷を噛んだようなサクサク感!口の中で溶けるに従ってフレッシュなイチゴやみかんの味がしてきます。まるで別物です。
冷凍技術の発展と専門的な冷凍装置には驚くことばかりでした。良い条件で冷凍状態を保つことができれば、食材の保存期間を延ばすことができ、かつ元に近い状態で解凍することも可能だと実感しました。
今回のセミナーで何度も先生が言われていた大事なこと。「食材の品質を保つためには、鮮度のよい食材を適した方法で前処理をし、素材に合った適切な凍結をし、適切な環境・温度で保存し、食べるときも適切な方法で解凍・調理すること(システム冷凍という)」
すべての流れが適切に行われることによって美味しさが保たれるのですね。産地から届いた野菜を適切な状態で保ち、配送していくまつののセンターのことを思い出しました。一般の家庭では急速冷凍はできませんが、
・鮮度の良い状態で冷凍する
・乾燥、酸化しないよう空気に触れないようにする
・冷凍庫の温度を一定に保つ(扉の開け閉めに注意)
・適切な解凍・調理を行う
以上のことを意識して冷凍術を活用してみてください。
冷凍の世界は今後ますます注目されることと思います。近い未来、冷凍できないといわれている食材も冷凍&解凍しても生と同じように食べられるようになるのも夢ではないかもしれません。私も冷凍生活アドバイザーとしてさらに興味を持ち、もっと勉強を重ねていこうと思います。
東京都のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・冷凍生活アドバイザーの増田智子でした。
参考:おいしい冷凍研究所