佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスターの前田成慧です。
いちごには様々な種類があります。小さないちご、大きないちご、甘いいちご、酸っぱいいちご、丸い、長い、楕円形、逆三角形、形も色も大きさも味もそれぞれ違い、今や250品種以上もあるそうです。
佐賀県で2011年から「最もいちごらしいいちごを作ろう!」と始まった新しいイチゴの品種改良。7年の歳月をかけて約1万5000株の中から選ばれた品種がついに市場に出回り始めました。キャッチコピーは「眺めてうっとり、かじって甘い」、品種名は「いちごさん」です!
佐賀県が誇る「さがほのか」の後継品種として全国で愛されるいちごになるように…そんな願いがこめられています。
現在166戸の生産者が18ヘクタール(18万平方メートル)で栽培し、今年度の出荷見込みは900トン。収量、見た目、味と、全て揃った新品種は農家の所得増大につながるのではないかと期待が大きいいちごです。親のは「佐系14号」と「やよいひめ」。ネーミング前は「佐賀i9号」として2016年2月に品種登録出願されました。
そこで、今回は佐賀県白石町で34年間いちごを作り続けている溝口修一郎さん、泰子さん夫妻を訪ねました。
4棟あるハウスのうち1棟(330平方メートル)が「いちごさん」で、残りの990平方メートルは「さがほのか」。ハウスの土耕栽培で内側に実を生長させる「内ならせ」で、通路間隔を広げる方法をとっています。
「凛とうつくしい色と形、華やかでやさしい甘さ、果汁のみずみずしさ」この3つがウリの「いちごさん」ですが、実際栽培されている農家の方の反応が私は気になりました。
修一郎さん(70歳)は、美味しいいちごだと聞いてすぐに栽培を始めたそう。「30年以上いちごを作ってきて、ここまで良いいちごはない。うまかね!と思った。普通は小玉で終わるのに大きくて、収量も多い。さがほのかの1.2倍から1.3倍はある」と喜びの声。今まで、とよのか、さちのか、さがほのかと様々ないちごを作ってきた中で20年ぶりに出た佐賀県産新品種の「いちごさん」に期待を寄せています。
奥様の泰子さん(66歳)は、初めて栽培して初採りのいちごさんを食べた時の気持ちを「こがんおいしかいちごがあるのかなぁと思った!」と話しました。
実際に花芽も実成りも多い品種で、生産現場では摘果はしないで良いと指導されていました。今まで見たことのあるいちごハウスと雰囲気が違うのは収量の多さにあるようです。
そして、最大の魅力はいちごらしい整った形と色。ハリのあるつややかな濃い紅色が眩しいいちごです。
JAさが白石地区中央支所の生産指導係長の赤坂友和さんは「こどもが絵に描くシルエットのようにいちごらしい逆三角形の形で、最大の特徴は色です。見た目も良く、味も良い最もいちごらしいいちご。ワンランク上のいちごを目指しています」と語ります。
中まで濃い赤色で可愛らしいと評判で、色の良さからスイーツに活用するのもおすすめです。実は香りも良いので驚きました。キャッチコピーにもあるように、かじった瞬間に弾けるみずみずしさ、口いっぱいに広がるやわらかい甘さ…食べるほどに好きになる!全てが揃った理想的ないちごとして発表されています。
私も初めて口にしたときの香りと甘さが忘れられません。香りはいちごから直接感じるものではなく、食べると口の中から鼻に抜けるような花のフレーバーでした。甘さも強いというよりどちらかというとやさしくさっぱりとした甘味で、酸味はほどよく、歯ごたえも食べごたえもあります。見た目も味も良い、まさに「いちごらしいいちご」という言葉通り。さすが「いちごさん」!
しかし、この品種には栽培注意ポイントがあります。それは、上のイチゴの様に9割~完着の熟度で収穫しなければならないこと。「さがほのか」は7~8割の熟度で収穫し、輸送中に追熟させることが多いため、新しい「いちごさん」の栽培では収穫期に気をつける必要があります。「いちごさん」は追熟に時間がかかるので消費者の手元に届いた時に完熟していない場合は本来の味が出ていない可能性があるのです。
これから生産技術の確立と作付拡大とともに、「いちごさん」は全国に広まっていくと思いますが、最も美味しい「いちごさん」らしい味が安定供給されるまで少し時間がかかるかもしれません。でも、必ず全国で食べられるようになるはずです。
「いちごさん」のブランド名はコピーライターの渡辺潤平さんが、ロゴはクリエイティブディレクターの永井一史さんが手がけました。ブランドロゴの女の子のようなマークは真っすぐな性格で都会の雰囲気が感じられる女の子をイメージし、風になびく髪とすっとした姿から、流されない安定感を表現しているそうです。
ブランド名は口にした瞬間にみんなに長く愛されるいちごになるように、数あるいちごの中でもいつもど真ん中にいるような存在感を目指して、呼びやすくて覚えやすい、清々しいインパクトを持つ名前にしたそうです。
前田餅屋4代目の嫁である私、早速手に入れた「いちごさん」でイチゴ大福をつくり、店頭で販売しました。
お客様は新品種に興味を示して購入されていました。あんことの相性もよく、単体で食べるのも良いですが、これから加工食品やスイーツでも大活躍しそうな予感です。
平成30年度産からスタートの新品種「いちごさん」、まだまだ佐賀県内でも貴重ないちごですが、年々手に入れやすくなり味わいも安定していくと思います。いちご農家の方々も期待するいちごさん、これから佐賀県のブランドいちごとしての成長がとても楽しみです。
佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧でした。