ベジフルサポータージャーナル

千葉県自然が運んでくれる酒造り!寺田本家

伝統野菜・食文化

千葉県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、アンチエイジングフードマイスターの栗原美由紀です。

千葉県香取郡神崎町には江戸時代から300年以上にわたって酒造りを行っている蔵元があります。「自然に学ぶ酒造り」を原点に酒造りを続けている「株式会社寺田本家」。今回はここ寺田本家の酒造見学で学んだ日本酒造り、そして日本酒造りの工程で造られる酒粕などの発酵食品を使った野菜料理をご紹介します。
五人娘

日本酒作りに大切な原料は、米と水と微生物。ここ寺田本家では、生酛(きもと)造りという、自然の力を借りて造る昔ながらの製法を受け継いでいます。使用する米は無農薬自然米、仕込み水は神崎神社を水源とする地下水、微生物は自然由来の麹菌、そして蔵付きの酵母菌と乳酸菌。
蒸米

現代では、多くの蔵元が酒のもととなる酒母(しゅぼ)造りの際に、人工の成分を入れて培養する速醸造りを行い、早い期間でできる日本酒が多いです。これとは違い、自然の力で蔵に自生している乳酸菌を空気中から取り込む造り方を生酛造りといいます。生酛造りは難しい技術が必要ですが、寺田本家は昔ながらのこの生酛造りを行うことで味わい深い日本酒を造っています。

日本酒造りの工程を大きく分けると「麹造り」「酒母(酛)造り」「醪(もろみ)造り」の3つに分かれます。寺田本家の日本酒造りは、手のひら造り。麹造りも手作業の洗米から始まります。
洗い桶

米や布を洗う洗い場。寺田本家では次亜塩素酸や過酸化水素を使っていません。その代わりよく洗い、熱湯で沸かした湯で布は泳がせます。菌は100度くらいでは死滅しないのですが、「菌を整える、場を整える」として消毒しています。
こしき

洗米は、真冬でも素手で行います。素手で行うことで、米の割れ具合、水の浸み込み具合の状況がわかります。その後半切り桶に水を張ってしっかりタイマーで時間を測りながら浸漬させます。

そして、蒸し作業はこの大きな甑(こしき)で行います。
こしき
甑の下に釜があり、そこに水をはって蒸気の配管で沸かして湯気をかけます。蒸しあがってからが時間との闘い。蔵人が熱い甑の中に入り、樽に蒸米を入れ、すのこに布を張ったサナに広げていきます。この作業を何度も繰り返すのですが、素手で熱い蒸米を広げて冷ますので、大変な作業です。
こしき
蒸米ができたら「製麹室」で麹を育てます。ここで使う麹菌は蔵内に生息してる蔵付き麹菌を採取して自家培養した麹菌。独自の環境管理のもと、2日間丁寧に何度も切り返しの作業をします。

続いて酒母(酛)造り。酒母室では麹と蒸米、水を加えてもろみの発酵を助ける酵母を育てます。半切り桶に入れた米、麹、水を櫂棒(かいぼう)で2人1組ですりつぶし、粥状に溶かします。これは酵素の作用を受けやすくするためです。この作業は3回行われます。
酛摺り歌
これを山卸し(やまおろし)または酛摺り(もとすり)と言い、「酛摺り歌」を歌いながら擦ります。15番までありますが、様子を見ながら歌います。蔵人たちの楽しそうな姿や歌声で酒も私たち人間も元気になりそうです。生酛造りならではの光景です。

タンクに入れて一つにまとめ、お湯を入れた暖気樽(だきだる)であたためたり、冷気を当てたりして温度管理をこまめに行います。様々な微生物の働きで、最終的に強い甘みと酸味に耐えられる清酒酵母により、アルコール発酵が行われます。このようにして生酛造りでは蔵内に生息する硝酸還元菌や乳酸菌、蔵付きの酵母菌の力で約40日かけて酒母を造ります。

そして最終段階、醪造り。
醪造り
酒母に麹、蒸米、水を加えて醪を造ります。ひとつの酒母からここまで量を増やします。3回に分けて仕込む初添、中添、留添の三段仕込み。これが日本酒造りの特色。酒母の量を倍にして、さらに倍にして、もう一度倍にする。一度に入れるとアルコールと酸のバリアがほどけて清酒酵母以外の野生酵母が入り込み、発酵が不調になってしまう。そのため少しづつ入れてしっかり発酵させます。
醪造り

日本酒造りは、甘みを出す糖化とアルコール発酵が同時に行われていて、そのバランスをとる温度や水分管理が非常に難しいです。ここで30〜40日かけて甘味がアルコールに変わると搾られ、酒粕と原酒に分けられます。寺田本家の日本酒造りの特徴は、地のものを使った酒造り。こうして旨みのある濃く豊かな香りのよい日本酒ができあがります。

「酒は百薬の長」と言われます。これも発酵食品であることが理由のひとつかもしれません。味噌、醤油、酢など様々な発酵食品が出回っていますが、食品が発酵するとはどういうことでしょうか。発酵とは、微生物の力で食品が分解されること。それが味や香り、旨みや栄養素を増したりと人間にとって有益になるものを発酵。逆に食中毒など人間にとって害になるものが腐敗です。その区別は、食物や微生物の種類によるものではなく、結果の話であり価値観の問題でもあります。微生物の働きの仕組みは同じなのですが、発酵と腐敗は全く別なのです。

さて、寺田本家には、発酵食品である麹や酒粕を使った料理を提供してくれるお店「カフェうふふ」があります。住宅を改装して作った店内は素敵な空間。
カフェうふふ

日本酒造りの工程で作られる麹や酒粕などが野菜と共に大変身します。
旬菜のぬか漬け
ぬか漬け

切り干し大根の甘酒ソムタム
切り干し大根の煮物

旬菜の酒粕シーザーサラダ
旬菜のサラダ

くるま麩の甘酒バーベキューソース
くるま麩の甘酒バーベキューソース

おからの甘酒煮
おから甘酒煮

酒粕と豆乳のクリームグラタン
酒粕と豆乳のクリームグラタン

じゃがいもの酒粕ガレット
じゃがいもの酒粕ガレット

雑穀ご飯と米ぬかふりかけ
雑穀ご飯の米ぬかふりかけ
砂糖の代わりに甘酒を使い、ケチャップや味噌、デザート作り。塩の代わりに白米麹や玄米麹で作った塩麹を使い、漬物やソース、たれ作り。そして料理にコクと旨みを出す酒粕は、クリームソースでグラタンやスープ、ドレッシング、味噌汁、焼き菓子などに使えます。魚を煮るときにも酒粕を少し入れると臭みが取れるそう。酒粕は醪造りの時に搾られたもの。ビタミン、食物繊維、様々な酵素が豊富に含まれています。こうして調味料すべて発酵食品の料理は、からだに優しい美味しさです。

昔ながらの日本酒には、様々な健康効果も報告されています。発酵食の素晴らしさを見直し、もっと身近に発酵食を取り入れて、元気なからだと心を維持したいですね。

千葉県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、アンチエイジングフードマイスターの栗原美由紀でした。

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