山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。
今年も残り1か月を切り、山梨県内の果樹園も葉が落ちてきました。そんな中、様々なところで見かけるオレンジ色のカーテン。通称「柿すだれ」とも呼ばれ、晩秋から初冬の山梨を彩っています。
特に私が幼い頃を過ごした峡東地域では、この時期の恒例行事として「干し柿」作りをするお宅も多く、軒先やベランダなどに柿すだれが見られます。今回は亡き祖母から受け継いだ干し柿づくりをご紹介します。
一般的に「干し柿」というと大きく分けて2種類。1つが水分を50パーセントくらい残した「あんぽ柿」とも呼ばれるセミドライタイプ。
そしてもう1つが水分を25~30パーセントになるまで乾燥させたドライタイプ。
我が家で作るのはドライタイプで、山梨県では「枯露柿」と呼ばれて親しまれています。
10月下旬から直売所には加工用の柿が大きな袋に入って並びます。写真は「大和百目」。
実家の本家である叔父の家には、祖母が残してくれた大きな「甲州百目」の木があります。甲州百目と言えば、干し柿に使う不完全渋柿。渋柿といっても糖度は20度を超えているものもあり、じっくり渋抜きを行うことで、濃厚な干し柿に仕上がります。
元々は「甲州百匁(もんめ)」と言われており、百匁(=約375グラム)のサイズがあることからこの名前が付いたとも言われています。その名の通りどれもとても大きなサイズで、中には500グラムを超えるものもあります。
昨シーズンは400個以上の柿を干しましたが、今年は強風でだいぶ落ちてしまったと聞いていました。それでもスーパーのカゴ7個分。自宅用として仕込むには十分すぎる量がありました。
まずは収穫。枝を少し残して切ります。
次に、吊るすことをイメージしながら枝をT字に切ります。
吊るす際引っかからないよう、ヘタはできるだけ取っておきます。
続いて、柿の肩を落とします。
それから皮むき。ピーラーで1つずつむきますが、実はこれが結構大変。
どの柿もとても大きく、決して小さくはない私の掌で握るのがやっとというものばかり。作業が進むにつれ、柿を握る手の握力がなくなっていくのが分かります。
カゴ7個分の柿は、むいた皮も大量です。祖母はたくあんを漬ける際使っていました。
いよいよ吊るす準備。T字に残したヘタに紐をつけ、2個の柿をつなぐ重要な作業です。
その後、熱湯に10秒ほど入れます。この作業によって殺菌やカビ防止効果が期待できます。焼酎を使ったり、色を良くするために硫黄で燻す場合もありますが、我が家ではこれが定番。
熱湯消毒した柿をベランダに運び、吊るします。傷がついたものも多く、仕上がりが心配ですが、しばらく自然の力に任せて見守ります。
約20日後。程よく乾いてきたので、柿をもんで芯を切ります。強くもむと中の熟した部分が外に出てきてしまうので、力加減が難しい作業です。
こちらはきれいに芯切りできた2種類の柿。左が甲州百目。そして右は直売所で見つけて一緒に干した蜂屋柿。蜂屋も決して小さくはないのですが、甲州百目のサイズが際立ちますね。
芯切りを終え、あと1週間前後吊るします。
作業開始から約1か月、干していた柿を全ておろします。
ここからは平干し。柿の様子を見ながら1日1回程度表裏を変えながら10日前後。
サイズもバラバラなので、仕上がりには時間差も。時々味見もしながら様子を観察します。
プロが作った販売用の枯露柿はサイズや形もそろい、綺麗に並んでいますが…
我が家の枯露柿は不格好。
断面を見比べても一目瞭然ですが…
それでも、全体にびっしり粉が吹き、愛情をかけて丁寧に仕上げた枯露柿の味は格別です。
ドライフルーツは「フェーズフリー」な「食」として注目されているのをご存知でしょうか。フェーズフリーとは、いつも利用しているモノやサービスがもしもの時にも役に立つこと。枯露柿もドライフルーツの1つ。そのままでも保存性は高いですが、冷凍保存しておけば、長期間楽しめる上、停電時にも食べられます。そういえば我が家の冷凍庫にも昨年の枯露柿がまだあったような(笑)
祖母が残してくれた甲州百目の木。亡き後も「おばあちゃんならきっとこうしたよね!」と祖母の話をしながら家族で枯露柿づくりをする時間は、とても大切なものになっています。これからもずっと続けていきたいと心から思っています。
山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。