山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。
季節ごとに様々な果物が収穫できる山梨県南アルプス市。今回の主役は「フルーツ王国ならでは!春の花々を愛でる」のレポートでもお伝えした「果実園オガサハラ」の小笠原聡さん・実英さんご夫妻が育てているキウイフルーツです。
キウイフルーツというとニュージーランドなどの外国産のイメージが強いかもしれませんが、これからの時期は国産キウイの最盛期。こちらではグリーンのキウイ「ヘイワード」を栽培しています。
4月上旬、桃やサクランボの花が咲き誇る春、キウイフルーツの新芽が顔を出します。こちらは雄木「トムリ」の芽。
そしてこちらが雌木「ヘイワード」の芽。
約1か月後、どちらも白い花を咲かせますが、雄花の方が若干早め。授粉のために、咲いた雄花の花粉を採取します。
取った花粉はピンクの花粉増量剤「石松子」を混ぜ、授粉の準備をします。
咲いた雌花。
授粉にはスポイトのような道具を使います。膨らんでいる部分を手で押し、花粉を付けます。
授粉前がこちら。
そして授粉後。めしべがピンクになっているのが分かりますか。
1度の授粉では結実しないことがあり、より安定的に結実させるためには複数回行う必要があるので、電動花粉交配機も併用して作業しているそう。
うまく授粉ができると、1週間ほどでキウイの赤ちゃんが見えてきます。
キウイは授粉してから2か月で8割ほどのサイズに成長します。その間には摘果作業を行う場合もありますが、こちらでは行わず、果実の本来の力に任せています。元々病気や害虫にも強いので、農薬も使いません。それでもヘイワードはたくさんの実を付けました。
そして、霜が降りる前の11月上旬に収穫。取材したのは収穫初日でしたので、私もお手伝いをしました。じゃがいものように硬い実は初心者でも比較的容易に収穫することができるので、小笠原さんご夫妻と一緒に2時間ほどで約500キロを収穫しました。
たくさん収穫した中にはこんな実も。左の実は授粉がうまくいかず、成長できなかったもの。
また、直射日光が当たっていたキウイはこのように日焼けしています。
中にはこんなハート形のキウイも。正規品としての出荷は難しいそうですが、種がたっぷり入っており、「実はこういうキウイが美味しいんだよ」と聡さん。
キウイは樹では熟さないフルーツであることをご存知ですか。糖度が6~8度くらいになった時点で収穫するのが理想とのこと。この日収穫したキウイを測ってみると6.8度でした。
断面はこのようになっています。とても硬くて酸っぱくてまだ熟度が足りていません。
収穫したキウイは冷蔵庫で貯蔵すると半年くらいは保存可能。低温では追熟しないので果肉は硬いまま。こう考えると外国産の美味しいキウイが多く出回る理由がよく分かりますよね。こちらでも昨シーズン5月頃まで出荷をしていたそうです。
そんなキウイを美味しい状態までもっていくのに重要なのが温度。15~20度の温度帯においておくことで追熟が進み、10日~2週間ほどで柔らかくなります。通常スーパーなどで売られているキウイは追熟が終わった状態のものが多いですが、もし購入したキウイが硬い場合、すぐに冷蔵庫に入れず常温で保存してくださいね。
しかし、そんなに待てないという人のために力を貸してくれるのがリンゴ!リンゴから放出されるエチレンガスはキウイの追熟をサポートしてくれます。バナナにも同様の効果がありますが、リンゴのほうが効果的。
一緒にビニール袋に入れて常温におくと追熟スピードが上がります。また、リンゴの中でも「ふじ」や「サンふじ」はエチレンガスの生成量が比較的少ないため、「王林」「つがる」「ジョナゴールド」などがおすすめです。リンゴを一緒に入れておくのは2~3日でよいそうですが、日にちはあくまで目安。手で軽く押さえて柔らかくなれば食べ頃です。
ところでみなさん、キウイは上下どちらが甘いか知ってますか。答えは下のお尻の部分。ものによっては糖度が1度くらい差が出ることもあります。
追熟が進んだ食べ頃キウイの糖度を実際に測ってみると、上の方が14.3度。下のお尻の方は15度を超えていました。
上下にカットしたキウイ、あなたはどちらを選びますか?笑
山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。