佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスターの前田成慧です。
この度の記録的な豪雨により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。佐賀県内でも各地に被害が出ております。一日も早い復興を祈り、応援の思いを込めて、豪雨の前の果樹園の様子をレポートさせていただきます。
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すももと言えば、山梨県や長野県などが主産地ですが、佐賀県伊万里市南波多町「フルーツの里」ではすもものハウス栽培が積極的に行われています。
今回訪問したすもも農家の梅村光昭さんは元々梨の専業農家でした。
15年前に梨畑130アールのうち18アール(1800平方キロメートル)をハウスすもも畑に変換。すももは梨やリンゴ、桃などと同じバラ科の植物で、栽培管理が似通ったところがあるそうです。年間を通して栽培経費が少なく、果実の重量が軽くて収穫が楽であること、農薬の回数が少なくて済むこと、剪定が早く終わるなど、梨栽培にはない魅力があるそうです。
(写真は5月下旬~6月上旬に出回るハウス栽培の大石早生)
すもも栽培を始めたきっかけは、「とにかく農薬を少なくしてつくれるもの」だそう。病害虫がでにくく、病気に強いので、化成肥料は使わず、農薬は慣行栽培の半分以下で栽培しています。
また、酵素農法のひとつである島本微生物(発酵)農法を学んでいる梅村さんは、有機液肥料を自分でつくったり、魚かすや米ぬかを加えて発酵させ、特に土づくりにこだわって栽培しています。梅村さんは佐賀県の特別栽培農産物認定証制度に基づき環境保全型農業を営むエコファーマー認定者です。
6月上旬、奥様の正子さんと、娘婿の重幸さんとともに、一番初めに出回る「大石早生」を収穫していました。梅村さんのすもも農園は、ハウス栽培が18アール、トンネル(雨避け)栽培が26アールで、年間6トンを出荷しています。
「大石早生」から始まり、6月中旬から「ソルダム」や「大石中生(なかて)」、6月下旬からは「ハリウッド」、7月上旬から「サマーエンジェル」「貴陽」などを収穫します。すももは自家結実性が無く(同じ樹の花粉では交配できない)、ハウス内には交配樹として様々な品種のすももの樹が植えてあります。
6月上旬、まだまだ未熟果の「貴陽」はつるつると表面が滑らかで、綺麗な黄緑色をしていました。すでに大きくて立派なサイズです。
6月下旬になると、可愛いピンクの実がたわわに実っていました。あと1週間ほどで出荷です。
梅雨どきのハウス内は太陽光が少ないので、反射板の代わりに白いシートを果樹の下に敷き詰めます。
ちなみに、「貴陽」の樹は写真のようにねじれており不思議な幹でした。特性でしょうが、他の品種の樹はこうもねじれていません。大木となった「貴陽」は樹そのものにも存在感がありました。
今年はこれまでにないほど実生りが良いそうです。その理由は、開花期の受粉のタイミングがうまくいったから。受粉はニホンミツバチと人工交配の両方を行っていますが、ハウス内で開花したすももの枝を切り取り、トンネル栽培の樹の下に交配樹として置いてミツバチたちに受粉してもらうそう。特に「貴陽」については栽培が難しく、梅村さんは「10年ばかりは実りが悪くてもうだめだと思った」と言いましたが、これまでの努力が実って今年は豊作です。
あと少しで出荷できる状態の「貴陽」はほんのりピンク。さらに熟度が増すと赤紫色に染まり、ブルームが濃くついてきます。
ブルームとは、ブドウなどの表面が白く粉っぽくなっている状態で、果物自体が病気を防いだり、水分を逃がさないようにつくる天然成分のロウ物質。鮮度を保つ働きがあり、果実の皮に粉のような白い物質があればそれは新鮮だという証拠です。
また、果皮に「輪紋」と呼ばれるリング状の小さなヒビ模様があるのが特徴で、「このスジが入っている貴陽のほうが味がのっている」と梅村さん。
皆さんの笑顔がとても印象的で、すももに対する愛情が感じられました。
すももには様々な品種がありますが、特に「貴陽」は「すももの王様」と呼ばれるほどの大玉。250~300グラムほどでリンゴのようなずっしり感があり、世界最大のすももとしてギネスブックにも登録されています。
中の果肉はオレンジ色~黄色で果汁がしたたります。ジューシーで果肉が柔らかく、ほどよい酸味がありながら、甘味が強くて濃厚。まるで白桃のような大きさで食べごたえがあります。
甘さ、ジューシーさ、柔らかさ…さすが王様!食べごたえ抜群です。
すももの様々な品種を並べてみました。上から「貴陽」「ハリウッド」「ソルダム」「大石中生」と並んでいます。品種は様々で、それぞれ見た目も中身も全く違います。
カラフルで個性的なすもも、ぜひ食べ比べてみてくださいね!
後編ではすももの品種とすももの種を使った杏仁豆腐の作り方をご紹介します。
佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスターの前田成慧でした。