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青森県清らかな湧水が育む!真冬の「一町田のせり」

まつのベジフルサポーターレポート

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑(かけはた)睦子です。

一年で最も寒さが厳しいと言われる大寒から、しだいに日が長くなり春へ向かう時期ですが、今年は北国に限らず日本中が大雪と寒波で、春の兆しはどこへやら…青森も一面銀世界!今回は厳寒の津軽地方で収穫されている「一町田(いっちょうだ)のセリ」をご紹介します。

正月料理や春の七草でおなじみのセリは、日本全国の沢や河川の水際に群生し、古くから栽培もされています。だいたい2〜4月が旬ですね。今では養液栽培も盛んになり通年流通していますが、一町田のセリは露地とハウスで11月下旬〜3月上旬の厳寒の冬が旬です。

標高1625m、津軽富士といわれる岩木山の麓の弘前市一町田地区。

この地区では清らかな湧水が凍ることなくセリを育んでいます。

約50年前に島根県松江市から種を譲り受けたことから栽培が始まり、セリ産地として知られるようになりました。

これは「セリ苗代」といい露地物が終わったあと収穫されるセリハウス。「この辺りは一面セリ苗代だったばって(だったけど)、今は2軒だげだ」と話すのは、一町田セリを守る会の渋谷勝治会長。

当初は30軒ほどあったものの、高齢化にともない現在は半数の15名となり、生産者は年々減り続けています。その中でも一番若手の渋谷さんは祖父からセリ田を受け継ぎ、現在10アールずつ3ヵ所でセリを栽培。りんごと米も生産しています。「若手後継者の育成は難しいが、子育てが終わってからでも考えてくれたら嬉しいなぁ」と話していました。

セリ栽培は田植えの合間の5月中旬からセリ田に苗を植え付けることから始まります。8月下旬~9月上旬に一度刈込み、次節から新芽が育ち、出荷用のセリに成長するそう。

11月下旬から収穫が始まる露地もののセリ田。湧水場は一定の水温を保ち、凍らず残っていました。

現在はセリ苗代、ハウスものの収穫がピークを迎えています。

この日は時折日が射すものの気温は氷点下。厳しい寒さの中、冷たいセリ田に入ります。ハウスの入り口には鴨除けの網が仕掛けられ、その網をよけてボートを引きながら収穫していきます。野生の鴨にとってもセリは冬場の貴重な食料になっているようです。冷たい水が堪えると渋谷さんが心配されるので、私は外から見学しました。

収穫したセリは、汚れをとり井戸水で丁寧に洗って選別し、150グラムに束ねられ、青果市場に出荷されます。


ピークはお正月、春の七草と需要の高まる年末年始で、ほとんどが県外に出荷されます。1月下旬からようやく地元のスーパーや道の駅でも手に入るように。私も今回初めて一町田のセリを食べることができました。

セリはなんといっても鍋がおすすめ。秋田のきりたんぽ鍋や仙台のセリ鍋は有名ですね。セリを主役に鶏出汁でシンプルにいただきました。

シャキシャキとした食感とやさしい香り、甘みが体を温めてくれます。

セリの独特の香り成分は、体温を上げ発汗作用を促し、解熱・解毒効果が期待されます。特に風邪が流行する寒い時期には重宝され、薬膳にも取り入れられています。胃にやさしく、胃腸を健やかに保つ作用もあることから、七草粥でもおなじみですね。カロテンやビタミンC、カルシウム、鉄分が多く、血液を浄化し、美容効果もあるようです。

渋谷さんのおすすめは、味噌汁・かき揚げ・卵焼き・お浸し・炊き込みご飯・子和えなど。調理の最後にセリを加え、余熱で仕上げることで香りと彩りを楽しみましょう。


県内でも珍しい一町田のセリの生産。今後も絶えることなく存続していくよう応援していきたいです。寒い日の食卓にぜひ取り入れてみてくださいね。

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑睦子でした。

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