まつのベジタブルガーデン

長野県リンゴの品種を食べ比べ!信州リンゴの旅

野菜・果物品目レポート

熊本県まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの佐藤真美です。

だんだん寒くなってくるにつれて、この時期はリンゴの品種も中生種から晩生種へと移り変わります。「一言でリンゴといっても、国内には約2000種以上ものリンゴがあるそうですよ」と言うと、「そんなにあるんですか?」という驚きの声を多数聞きます。いろいろなリンゴに出会うべく東京や長野へ出向き、この秋食べたリンゴはやっと30種ほど。今この瞬間も新しい品種が誕生しているかもしれません。
リンゴ
リンゴの品種は主に
・外国原産のものが日本に入ってきたもの
・自然交雑実生(果樹園で自然に交雑して得られた実生)
・偶発実生(種子の両親は不明であるが、たまたま優秀な形質を持つ実生樹として発見された実生)
・枝変わり(一部の枝のみが突然変異によって、他と異なる遺伝形質を示す現象)
・交配(繁殖や品種改良などのために人工的に受粉を行うこと)
で作られています。

さて、ここでクイズです。日本で一番多く作られているリンゴの品種は何でしょうか?
サンふじ
正解は「ふじ」です。日本のリンゴ収穫量の約5割を占めています(平成29年度農林水産省調べ)。ふじは青森生まれ。国光とデリシャスを交配したものです。晩成種なので11月頃がおいしい時期。甘みが強くシャキシャキの食感。収量が多いリンゴなので、産地や育成のこだわりで、生産者別に微妙な味の違いを楽しむことができるのも特徴の一つ。あなただけのお気に入りの「ふじ」を見つけてみましょう!

ふじは交配親としても大活躍!ふじからいろいろな品種のリンゴが誕生しています。長野県を代表するリンゴ「シナノスイート」
シナノスイート
ふじとつがるを交配して作られた品種で、濃厚な甘みと香りが特徴です。10月頃になると長野ではシナノスイートが店頭にずらりと並びます。食感が柔らかく酸味も穏やかなので、子供から年配者まで幅広く人気です。シナノスイートも生産者で味が変わります。私は生産者5〜6軒のシナノスイートを食べましたが、甘さや柔らかさ、皮の食味までの微妙な違いを楽しむことができました。

2013年に品種登録された「シナノホッペ」
シナノホッペ
ふじとあかねを交配して作られた新しい品種。横から見ると楕円のような形をしているのが特徴です。果肉は蜜がたっぷり入りやすいため香りが高く、シャキシャキとした硬めの食感。10月下旬からがおいしい時期。長野でも生産量は少ないので手に入ればラッキーですよ!

地域限定オリジナル「豊秋(ほうしゅう)」
豊秋
長野に住んでいてもなかなか見かけることは少ないと言われている幻のリンゴ。私は長野市のリンゴ狩り店で見つけました。ふじの枝変わりからできた品種で長野市豊野地区のみで生産されているのですが、栽培方法が難しく収量も少ないとのこと。柔らかい食感で甘みも十分あり果汁もたっぷり!ふじによく似た味です。

極小のリンゴ「アルプス乙女」
アルプス乙女
手のひらにちょこんと乗るサイズがなんとも可愛らしいリンゴ。お祭りの屋台で販売されるりんご飴に使われるリンゴの一つです。アルプス乙女はふじと紅玉の混植園で偶発実生として育成されました。親の掛け合わせは、ふじと姫リンゴの可能性が高いとも言われています。ミニリンゴの中では甘みもありますが、果肉は硬め、製菓用や装飾用にピッタリです。

謎の多いリンゴ「涼香の季節」
涼香の季節
この品種が生まれた背景はまだはっきりとわかっていないそうですが、最近の研究結果でふじの枝変わりの可能性が高いということです。甘みが強く、ジューシーな果汁と芳醇な香りが特徴ですが、爽やかであっさりとした後味がクセになりそうなリンゴです。10月頃がおいしい時期です。

大玉で甘みの強い「あいかの香り」
あいかの香り
ふじの自然交雑実生から生まれた品種で、甘みがとても強く、果汁もたっぷり。酸味が少ないので甘いリンゴが好きな方にはオススメです。霜降り状に蜜が入りやすいのが特徴の一つでもあります。11月からが食べ頃。

ふじから黄色いリンゴも誕生「星の金貨」
星の金貨
正式な品種名は「あおり15」と言い、ふじに青り3号を交配した品種。親はどちらも赤いリンゴですが、リンゴに含まれる色素成分の量により皮の色が変わってくるそう。赤い親同士のリンゴから黄色いリンゴが生まれるからなんとも不思議です。まるでリンゴジュースを飲んでいるかのように果汁が多く、噛んだ瞬間からジュワーと果汁があふれ出ます。甘みも優しくとても食べやすいリンゴです。

秋田生まれ「千秋(せんしゅう)」
千秋
東京でもよく見かけるリンゴではないでしょうか?ふじと東光の交配で10月が食べ頃。市場でも千秋はよく見かけましたが、全国に出回っているリンゴの一つでもありますね。果肉はしっかりと硬く、果汁たっぷり。甘みもありますが酸味も十分にあり、香りや旨味も楽しめるリンゴです。他のリンゴに比べて一回りほど小さいサイズなので、食べやすい大きさでもあります。

その千秋が親になって生まれた品種もあります。
信州りんご3兄弟の一つ「秋映(あきばえ)」
秋映
千秋とつがるを交配させた品種で、長野県のオリジナル品種。濃赤色が何とも美しいりんごで、完熟すると黒に近い赤へと移り変わります。甘みと酸味がしっかりしており、果肉は硬めでサクサクとした食感。果汁も多く、濃厚な味わいが楽しめます。

山形県の代表品種「秋陽(しゅうよう)」
秋陽
千秋に陽光を交配させた品種。初めて味わった時に虜になってしまい、丸々一個をぺろっと食べてしまいました。パリパリとした食感と甘酸っぱい味が忘れられず、また食べたいと思うほど。いつか山形の産地へ行ってみたいほどです。

さて、西洋リンゴの歴史を辿ると明治時代にまで遡ります。「紅玉(こうぎょく)」はアメリカ生まれ、明治時代の初めに日本にやってきました。
紅玉
かつてはリンゴと言えば紅玉!と言うほどの人気ぶりでしたが、現在では菓子製造に向いていることもあり、ケーキやアップルパイなどによく使われています。果肉は緻密で硬め、やや酸味が強めでもあります。リンゴらしい鮮やかな赤い色は写真にも映え、今でも根強い人気があります。

その紅玉と黄色い品種の代表格「ゴールデンデリシャス」を交配して生まれたのが「あかぎ」です。
あかぎ
蜜のように甘く、とても柔らかいリンゴで、果汁もたっぷり!紅玉のように真っ赤な色も特徴の一つです。

その、あかぎとふじを掛け合わせたのが「ぐんま名月」。
ぐんま名月
ぐんま名月は香りで食べるリンゴだと思います。まるで、リンゴ園で食べているような気分にさせてくれます。黄色にほんのり赤色がふわっと染まった果皮もとても綺麗です。

ゴールデンデリシャスは大正時代に日本に導入されました。今では交配親として大活躍です。長野県の黄色いリンゴを生み出し、今では大人気となった「シナノゴールド」。
シナノゴールド
ゴールデンデリシャスに千秋を交配した品種です。やや強めの酸味とサクサク食感が爽やかな気分にさせてくれます。シナノゴールドも生産者によって味が微妙に変わります。私は3〜4軒のシナノゴールドを味わいましたが、甘みと酸味のバランスの違いを楽しむことができました。

シナノゴールドと同じ交配「シナノドルチェ」
シナノドルチェ
黄色いシナノゴールドと同じ交配なのにシナノドルチェは赤いリンゴです。味はシナノゴールドに似て、酸味がやや強めのサクサクとした食感。香りも高く、甘みだけでなくほどよい酸味も求めたいという方にオススメです。

手のひらにすっぽり収まるサイズ「シナノピッコロ」
シナノピッコロ
ゴールデンデリシャスとあかねを交配した品種です。シナノピッコロはなんとも可愛らしい手のひらサイズ!一度に食べきれる上、小さいながらも甘みがしっかりあり、果肉はほどよい柔らかさなので、思いっきり丸かじりできますよ。

黄緑色が綺麗な「王林」
王林
青リンゴの代表格。ゴールデンデリシャスと印度の交配で、見た目が黄緑色なので酸っぱいように見えますが、甘みが強くて酸味は控えめ。硬めの食感で食べ応えも十分です。赤いリンゴにはない、独特の風味が私は好きです。11月がおいしい時期です。

クリーム色に輝く「金星」
金星
ゴールデンデリシャスと国光を交配した品種。名前の通り黄色っぽい色で、金星のように輝いた果皮をしています。私が頂いたのは有袋栽培のもので、ふわふわの食感と爽やかな甘みが上品な味わいでした。

その金星から生まれた「千雪(ちゆき)」
千雪
私が見かけたのは豊洲の市場でした。東京ではなかなかお目にかかれないそう。千雪は、金星にマヘ7を交配した品種で、正式な品種名は「あおり27」と言います。
千雪の褐色比
リンゴの果肉は時間が経つにつれて褐色していきます。しかし千雪は時間が経っても果肉が褐色しにくいのが特徴。この性質からシェフやパティシエに人気のリンゴとなっています。

さて、みなさんは蜜入りリンゴと蜜なしリンゴ、どちらが甘いと思いますか?蜜入りはとても甘い!という印象があるかもしれません。しかし、蜜の部分だけ食べてみると甘くもなんともないのが事実です。
リンゴの蜜
蜜の正体はソルビトールと水分。ソルビトールはリンゴの成長中に果糖に変化します。しかし完熟になると果肉が果糖でいっぱいになり、果糖になりきれなかったソルビトールは果糖に変化しないまま水分に溶け込みます。それが蜜の状態として果肉に現れているのです。蜜があるということは完熟だという証拠であり、蜜があってもなくても糖度はさほど変わらないのです。

長野のリンゴ園を散策していると、とても不思議な木を見つけました。1本の木に3種類のリンゴが実っているではないですか!原木のあかぎに、秋映とシナノゴールドを高接ぎしているものだそう。観光農園にある木なので見せるためのものということですが、それにしてもすごい技術ですね。
リンゴ高接ぎ
リンゴ高接ぎ
また長野市には信州リンゴ発祥の地があります。長野県のリンゴの導入は1874年。それまでは養蚕が盛んな地域だったそうです。水害などの天災を乗り越え、現在のような一大産地になるまでは大変な苦労があったとか。おいしいリンゴが食べられることに感謝ですね。
信州リンゴ発祥の碑
まだまだおいしいリンゴの季節、自分好みのリンゴを見つけて旬の味覚を楽しんでくださいね!
リンゴ
これからもリンゴを食べ続ける、熊本県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの佐藤真美でした。

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