まつのベジタブルガーデン

佐賀県ホクホク感抜群!「しろいし蓮根」を食べとかんば~【収穫編】

まつのベジフルサポーターレポート

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ・食育マイスターの前田成慧です。
しろいし蓮根
佐賀市の南西部に位置する白石(しろいし)町は蓮根が有名です。九州では、佐賀の蓮根と言えば「しろいし蓮根」と言われるほどで、佐賀県の蓮根生産の95%を白石町が占めています。大正11年、水はけの悪かった土地に一人の農夫が蓮根を植えたことから白石町の蓮根栽培は始まり、今では佐賀県が全国3位の生産量を誇る一大産地となりました(平成28年度農林水産省・作物統計より)。

白石町内は畑や田んぼの合間に蓮田が多く広がっています。白石平野の重粘土質の土壌は、有明海の干拓地(農地を造成するために海を干しあげて陸地化した土地)であったことから、ミネラル分が豊富で蓮根の栽培に最適です。
 しろいし蓮根
今回、白石町の黒木啓喜さん・貴子さん夫妻が営む黒木農園を訪問。生まれて初めて蓮田の中に入って収穫体験をしてきました。
 しろいし蓮根
前日の夜はなんとマイナス5度!日中の気温は2度で風も強く、とても寒い中での体験となりました。蓮田の縁には氷が張っています。ドライスーツ素材の特殊な防水防寒着と長袖の分厚い手袋を装着し、いざ蓮田の中へ!
しろいし蓮根
防寒着のおかげか、蓮田の中は意外と寒くありません。覗き込むように収穫作業を見ていると、「正座してごらん」と啓喜さん。蓮田は胸まで深さがあると思っていましたが、実は膝立ちしながら堀り進めるので、実際の深さは膝下程度。入ってみないと分からないことばかりです。しろいし蓮根
粘土質の高い土の中、蓮根は横向きに成長していきます。「蓮根」という字は「蓮の根」とありますが、実際が蓮の「茎」であり、根茎(こんけい)と呼ばれる地下茎の肥大したもの。蓮根の節に生えている黒いヒゲのようなものが根で、ここから養分や水分を吸収し、茎から葉先まで送っています。

地下茎も呼吸をしなくてはなりません。蓮根の穴は空気を通すパイプの役目、穴の数は中心に1つ、まわりに9つ、合計10個ほど。葉柄や花茎にも10個ほど通気孔があり、地下茎から葉先まで通気孔はすべてつながっているから不思議です。
しろいし蓮根
実際に掘り出した蓮根はこのような姿。普段店頭に並んでいるものからは想像がつかないほど枝分かれしていて、それぞれの節からいくつもの蓮根が伸びている姿に驚きました。硬めの泥の中、縦横無尽に蓮根が伸びていて、手さぐりしてもどこからどこまでが蓮根なのかが全くわからないほど…。初めて知ることばかりで、収穫体験は驚きと興奮の連続でした!
しろいし蓮根
蓮根の掘り方は「鍬堀り」と「水堀り」の2つに大きく分けられ、黒木農園では用水路の水を機械でくみ上げ、ホースの先から出る水圧によって蓮根のまわりの土を吹き飛ばして収穫する「水堀り」を主としています。
 しろいし蓮根
蓮田の泥の中を進むのには大変な労力を要します。「こちらに来てごらん」と言われても、素人の私はなかなか足が進みません。

こちらの写真は、長いホースを蓮田の一番遠くから持って来ている場面。
しろいし蓮根
足運びはゆっくりでとても体力が必要な作業。冬の間、ホース内が凍って収穫できない時は「鍬堀り」も行います。この日は前日の作業で使ったホース内が凍っていたので、2本目のホースを準備して収穫しました。

別の品種の蓮田には蓮根の堀取機がありました。「強い水圧で蓮田の中を掘ると、泥が深くほぐれてしまい、年々深い蓮田になってしまいます」と啓喜さん。水圧を調整しながら泥の中を堀り進める作業は熟練の技が必要です。
しろいし蓮根
黒木農園では、啓喜さんが蓮田に入って収穫を行い、貴子さんが堀り上げた蓮根を洗って仕分けし、箱詰め作業をしています。3~4月の植え付け時は夫婦で一緒に蓮田に入ることも。夫婦二人三脚の作業が多く、家族で支え合いながら農業を営んでいます。
 しろいし蓮根
啓喜さんの祖父の代から約70年ほど蓮根栽培を続けており、初代から引き継いだ種蓮根を大事に育てています。節が大きくて糸をひきホクホクとした煮物に向く「金澄(かなすみ)」と、節が短い早生系品種の「成蹊(せいけい)」を総面積7反の圃場で栽培しています。黒木農園グループを立ち上げ、全体で20町程の蓮田を管理し、9名の若手の栽培指導も行っているそう。

黒木農園の蓮根は、慣行栽培(県内の一般的な栽培方法)に比べ、前年度の収穫後から農薬と化学肥料の使用量を5割以下で栽培し、「佐賀県特別栽培農産物」として認証されています。金澄は「蓮恋(はすこい)蓮根」と、成蹊は「しろいし蓮根」と区別して箱詰めし、東京の大田市場へ全体の約8割を出荷しています。
しろいし蓮根
柔らかくホクホクとした食感が特徴の「しろいし蓮根」。啓喜さんは「いろいろな作り方をしていたけれど、ここはなによりも土に恵まれている。田んぼが変わるとまったく違います」と語ります。佐賀県内でも場所が違えば土質も違うため、品質も変わってくることがわかりました。

一番大変なことを尋ねると、蓮根栽培の大変さではなく意外な返答が…「美味しい蓮根を作っていても、関東ではしろいし蓮根が知られておらず、佐賀蓮根として様々な産地のものが出回っている。品質のよい蓮根は九州で消費され、産地の安定しない蓮根が関東で出回るようになった。差別化してほしい」とのこと。

もっと佐賀の「しろいし蓮根」を多くの方に知ってもらいたい。そして味を知って欲しいです。私は、買い物するとき産地表示を必ず見ます。蓮根は「佐賀県白石町」と決めて選んで買います。皆さんも野菜や果物を買う際は、産地表示を見て食べ比べ、産地による味の違いを楽しんでほしいですね。「しろいし蓮根を一度は食べとかんば~(食べておかないと)!」
 
後編は黒木農園の「しろいし蓮根」を使ったお料理をご紹介します。 
佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスターの前田成慧でした。

佐賀県の記事