まつのベジタブルガーデン

山梨県目指せ3L!500円玉サイズのプレミアムさくらんぼ

まつのベジフルサポーターレポート

こんにちは。山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。

先日山梨県甲州市にある観光果樹園童夢さんを訪問しました。こちらはJR中央本線で新宿駅から約90分の塩山駅から車で数分、徒歩でも10分ほどなので、都内から日帰りで訪れるお客様も多い人気の果樹園。JR東日本からも高い評価を受け、毎年国内ツアーが組まれており、昨年は約370名が訪れたそう。今年もすでに100名以上の予約が入っているとのことです。

私が訪問した5月20日は新芽切りと摘果作業の真っ最中。この日の気温は30度を超える真夏日でした。
温度計
そんな中、汗をかきながら作業をしていた園主の菊島嘉郎さんにお話を聞かせていただきました。
菊島さん
童夢さんでは、いくつかの仕立てかたで栽培を行っています。まずは低木Y字仕立て。低い位置にさくらんぼができるため、脚立を使う必要がなく、子供たちも安心してさくらんぼ狩りが楽しめます。全体的に光が当たり品質が良いさくらんぼができますが、広い面積が必要となるため、収量が少なくなってしまうというデメリットもあるそうです。
低木Y字仕立て
続いて垣根仕立て。さくらんぼの樹を同じ形に整えるため、手入れは大変ですが、下の枝にも太陽の光がまっすぐ降り注ぎます。風通しも良いため、実も大きく、糖度が高い濃厚なさくらんぼが育ちます。
垣根仕立て
草取りがしやすいよう、地面から50センチ〜1メートルの高さには枝を作らないようにしています。確かに下の方はスッキリ!
草取りしやすい木
童夢さんではタヌキやシカなど、獣の被害はないそうですが、鳥には注意が必要です。その証拠に、授粉樹として外に植えている樹の色づいたさくらんぼには、鳥にやられた跡が。
鳥に食われたさくらんぼ
なので、お客様に食べていただく樹の周囲はネットで囲み、侵入を防いでいます。
ネット
さくらんぼの苗木は、台木に接ぎ木を行った後、収穫できるまでには5~10年かかります。台木には「青葉桜」や「コルト」を使用するのが一般的で、童夢さんの樹はほとんどが「コルト」。すぐ横の畑には、成長中の樹がすくすくと成長し、出番を待っていました。
成長中
童夢さんのさくらんぼは4月上旬~中旬に白い花を付けます。
さくらんぼの花
その後受粉を行いますが、さくらんぼは「自家不和合性」という性質を持っており、自家受粉しないものが一般的なので、交互授粉を行わなくてはなりません。このことを生産者さんの間では「こすりっこ」ともいうそう。同じタイミングで花が咲くものは、採った花粉をそのまま別の品種の花につけることで交互授粉ができますが、風が強かったり気温が適さなかったりするとうまく花粉が付かないことも多いため、複数回作業を行う必要があります。

また、品種の特性や日当たりの違いによって開花時期が異なることもあり、その場合はいったん花粉を採取し「石松子」というピンクの花粉増量剤を混ぜておきます。こうすることで授粉効率が向上するとのこと。その後授粉樹の花が咲いたところで、授粉作業を行います。
授粉作業
さくらんぼは受粉後約50日で収穫期を迎えます。私が訪問した日は授粉から約1か月が経過していました。通常ならあと20日ほどで収穫となりますが、「比較的気温の低い日が続いたため、少し遅れるのではないか」とおっしゃっていました。

この日、主に行われていたのは新芽切りと摘果作業。新芽切りを行う理由は2つ。1つは出過ぎた葉で実の日当たりが悪くなることを避けるためで、もう1つは次の年の芽を作るためだそう。写真は伸びる新芽。これをはさみで切り落とします。
新芽切り
続いて摘果作業。実が成り過ぎて重なっている部分は着色の妨げになってしまいます。どちらかを捨てる辛さを感じながら行う苦しい作業ですが、品質の良いさくらんぼを育てるためには非常に重要なのです。基本的には全て手作業ですが、よく見ると上にツヤがない実が2つ!枝の上にあるツヤのない実は自然に落ちてしまうそうです。そうやって自然の力も借りながら、摘果を進めていきます。
摘果
童夢さんでは、20種類ほどのさくらんぼを育てています。よく知られている「佐藤錦」や「紅秀峰」はもちろん、佐藤錦の交配種で果皮が紫黒色になる「紅さやか」、早生種の「香夏錦」、果皮が黄色く甘味の強い「南陽」、アメリカンチェリーの「レーニア」や「サミット」などもあります。こちらは童夢さんが育てる品種の中で一番色づきの早い紅さやかの様子。
紅さやか
1ついただいてみましたが、まだ甘味は乗っていないようです。
味見
他のさくらんぼの様子もこのような感じ。こちらはまだもう少しかかりそう。
成長中
こちらは大分色づいてきています。
成長中
童夢さんでは、一般的なさくらんぼ狩りの他に「Premiumさくらんぼ狩り」を実施しています。こちらは嘉郎さんがプレミアムさくらんぼを作るためだけに育て、さらに実のハリと味の良い、選び抜かれた樹のみをご案内するコースです。品種は「紅秀峰」がメイン。「佐藤錦」と「天香錦」を交配したもので、果肉はクリーム色で歯ごたえがあり、味は酸味が少なく糖度が高い品種です。他の品種に比べて日持ちも良いですが、さくらんぼ狩りでいただくなら日持ちはあまり関係ないですね。

また「Premiumさくらんぼ狩り」で一番特徴的なのがサイズです。さくらんぼにはS・M・L・2L・3L・4Lの6つの規格がありますが、童夢さんのプレミアムさくらんぼは3Lまたは4L。3Lは28ミリ~31ミリ、4Lはそれ以上です。500円玉をおいてみました。この直径は26.5ミリ。つまりこれより大きなさくらんぼ、ということになります。皆さま想像力を膨らませてください。右に大きなさくらんぼ、見えませんか。(笑)
500円玉
今のところ童夢さんでは露地栽培のみですが、来年からはハウス栽培も始める予定だそう。童夢さんがある甲州市周辺や南アルプス市周辺の露地さくらんぼ最盛期は6月頃ですが、ハウスなら1か月くらい早めることができます。さくらんぼファンにはうれしい情報ですね。

園主の嘉郎さんは童夢さんの9代目。ご子息は都内で働いており、繁忙期にはお手伝いをしてくれるそう。「あいつの人生は自分で決めてほしいから」とおっしゃってはいたものの、少し淋し気な様子だった気も。私がとても熱心していた様子から「いずれやってよ」なんて冗談も飛び出していました。

童夢さんではFAXや電話での注文も受け付けています。しかし、嘉郎さんはあまり積極的でないのだそう。それは、わざわざ足を運んでくださったお客様を優先したいという気持ちが強いから。ネット販売が当たり前の世の中ですが、お客様への感謝の気持ちを大切にする嘉郎さん、素敵です。

残念ながら「Premiumさくらんぼ狩り」は盛況により予約にて受付が終了しているそうですが、通常コースは受付中。ぜひ嘉郎さんの想いが詰まったさくらんぼ、一度食べに訪れてみませんか。童夢さんの2017年さくらんぼ狩りは6月3日土曜日スタートです。
食べ頃さくらんぼ
●童夢
山梨県甲州市塩山下萩原2176
予約専用電話:090-3516-0716
ホームページ:http://www.sakuranbogari-dome.com/index.html

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。

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