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福井県とろっと、とろける黒い宝石「吉川ナス」

まつのベジフルサポーターレポート

こんにちは。福井県のまつのべジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代です。

今回は、福井県のほぼ中央にある鯖江市の伝統野菜「吉川ナス」をご紹介します。

鯖江市には大小いくつもの河川が流れおり、肥沃な土砂が堆積した農地が広がっています。吉川ナスは、1000年以上の歴史があるといわれ、昭和17~18年頃には、鯖江市の旧吉川村一帯を中心盛んに作られてきました。しかし、その高度な栽培技術と種の自主確保の難しさ、品種改良された多収型ナスが登場したことにより、徐々に生産が減少し、栽培農家も減りつづけました。

平成21年にただ一人の栽培農家さんが亡くなられた後、種を受け継いだ有志10名が「鯖江市伝統野菜等栽培研究会」を立ち上げて栽培を始めました。現在では15軒の農家が栽培に取り組み、年間約1万個以上が出荷されるようになりました。


昨年7月、その生産技術と商品の品質の高さが評価され、国の地理的表示(GI)保護制度を伝統野菜としては、全国で初めて取得しました。GIを取得したことにより、知名度が上がり、取引先も多くなったことから、さらなる品質の安定と向上を目指して、会員が定期的に集まり、栽培講習会を行っています。

この吉川ナスは、京都の「賀茂ナス」とは類縁系統にあるといわれ、その名前の由来は、丸ナスの品種の分系「吉川(きっかわ)」から来ている、もしくは、旧吉川村で栽培されていたことからきていると言われています。


ソフトボールくらいの大きさで、球型もしくは巾着型で、直径約10センチ、300グラムほどの重さがあります。黒々と艶のあるその姿は「黒い宝石」と呼ばれています。

今回研究会の会長、徳橋岑生(とくはしみねお)さんをお訪ねしました。徳橋さんのハウスでは、200本もの吉川ナスが育てられています。

吉川ナスの栽培には、水やりと施肥の管理も大事ですが、何よりも「葉かき」と「芯とめ」が大切で、生育に余分な葉を取り除き、収穫後には枝を切り戻すという作業を常に繰り返されています。秋以降にも吉川ナスを育てるために、抑制栽培に取り組む農家さんもおられましたが、勉強と栽培技術が向上されたことで、春に植えた吉川ナスを冬まで育てることができるようになりました。(*抑制栽培:作物の自然の生育・成熟の時期を、人工的に抑制して生産・出荷の時期を遅らせる栽培方法 大辞林第三版より)

昨年は、初冬の頃が暖かかったこともあり、年を越した1月まで収穫できたというのですから驚きです。

生産だけではなく、他の茄子との品質の違いによる差別化や県内外への販売PR、地域を挙げてのブランド価値向上に力を入れてこられました。GI取得後はさらに引き合いが増えたことから、品薄状態になることもあるそうです。

吉川ナスが購入できるのは、道の駅西山公園など限られた販売店のみ。

道の駅西山公園のお問い合わせ先はこちら
福井県鯖江市桜町3-950
電話:0778-51-8181

吉川ナスの田楽
実が締まっていて、煮崩れしにくいことが特徴の吉川ナスは、油との相性も良いことから、輪切りにしたものを素揚げし、甘辛い田楽味噌をかけて食べるとジューシーで、とろけるような食感が絶品です。


道の駅西山公園名物 吉川ナスバーガー
鯖江市内のパン屋さんが焼いたバンズに、揚げた吉川ナス、甘い肉みそ、トマト、レタス、キュウリが挟んであり、大変人気です。例年6月下旬~10月下旬まで販売。


吉川ナスと豚肉の南蛮漬け
ナスは、ナス科ナス属、インドが原産、日本には8世紀ころに中国から渡ってきたと言われています。紫色のナスの皮には、アントシアニン系の色素「ナスニン」が含まれ、抗酸化作用があり、がんや動脈硬化などの予防に効果が期待できます。塩分の排出を助けてくれるカリウムも豊富なので、夏には、積極的に食べて欲しい野菜です。

吉川ナスと夏野菜のラタトゥイユ


吉川ナスの和風パスタ
薄く切った吉川ナスを揚げ焼きにし、焼いた豚肉、大根おろしをパスタに盛り付けて、しょうが醤油でさっぱりと食べます。

*今回、徳橋会長への取材の他に、鯖江市発行資料、さばえおいしい応援団Facebokページ、農林水産省HPを参考にいたしました。

福井県のまつのべジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代でした.

 

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