まつのベジタブルガーデン

山梨県黄金色の素「サフラン」のお花見はいかが?

まつのベジフルサポーターレポート

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。

甲府市内にこんな花が咲いていました。何の花か分かりますか?
サフランの花
これは「サフラン」の花です。甲府市でサフランの栽培に取り組んでいる「KitsuneFarm」は、農業生産法人「株式会社スリーピークス」の峰岸一郎代表が運営する農場。「農場」という言葉から連想するのはおそらく畑でしょうが、今回峰岸さんが案内してくださったのは、なんと倉庫!
倉庫
サフラン独特の香りが漂う倉庫の中には、たくさんの木箱が並んでいました。現在、収穫期の真っただ中です。
収穫作業中
サフランはアヤメ科の多年草。スペイン料理のパエリアやフランス料理のブイヤベースなどで色と香りづけのために使われる高貴なスパイスとして知られています。スペインやイランなど海外では露地栽培が主流ですが、国内産地の大分県ではこのような屋内での栽培が行われています。峰岸さんも大分県での栽培に倣い、室内栽培に取り組んでいます。

サフランの栽培は冬場土の中に植えておいた球根を掘り起こすところから始まります。5月頃掘り起こした球根を木箱に並べ、倉庫に置きます。
球根
そのまま水も光も一切与えず放置しておくこと5か月以上…10月下旬になって花径が伸びてきて、11月に入ると開花します。
球根から延びた様子
開花が始まると、いよいよ収穫。花摘み作業のスタートです。
収穫
サフランの花には深紅のめしべがあり、中央のおしべには黄色い花粉がついています。
めしべとおしべ
一般的に色と香りづけに使われているのはめしべを摘み取って乾燥させたもので、1つの花から3本しか取ることができません。
めしべ
約70個の花から採取できるサフランはわずかに0.4グラム。しかもそれを全て手作業で行っているのですから、高価なのも納得できますね。
めしべ
花を摘んだ球根は、しばらくするとまた花を咲かせます。11~12月上旬の収穫期間に全3回。3度の花摘みが終わった球根は、翌年の収穫に向け土に寝かせます。

今回取材した峰岸さんの本業は特殊鋼加工・販売業。Kitsune Farmの運営母体である株式会社峰岸商会の社長でもあります。そんな峰岸さんがサフラン栽培を始めたのには、2つの理由があります。1つは、製造業で培ってきたノウハウを生まれ育った山梨に還元できないかと考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが「農業」だったこと。もう1つは、峰岸商会創業者のお父様がご病気になり、食や医療について考えたときに偶然出会ったのがサフランであったこと。そこから峰岸さんの挑戦が始まりました。

当時サフランの知識がほとんどなかった峰岸さんは、たくさんの文献を参考にしたり、山梨県農政部や大分県竹田市のJA、サフラン研究の第一人者である長崎国際大学薬学部の正山征洋先生など、多くの方々のところに直接出向き、情報収集を行いました。そんな中、山梨県とサフランの縁を興味深く感じたそう。こちらの写真は甲府市から北西に15キロほど走った韮崎市の延命寺に群生しているサフランの花です。
自生するサフラン
誰かが栽培しているわけではないのに毎年咲いていて、近所の方たちもいつからここに咲いているのかはわからないとのこと。正確な情報はないものの、昔周辺で栽培されていたような、そんな気がしたそうです。

また、山梨県甲州市に現存する日本最古のワイナリーまるき葡萄酒では、1891年(明治24年)の創業当時に甘味葡萄酒「サフラン葡萄酒」を販売、1895年の内国勧業第4回博覧会にて出品有効賞を受賞したという記録が残っています。現在サフラン葡萄酒は販売されていませんが、当時山梨県内か近隣でサフラン栽培が行われていた可能性が高いのでは?と、峰岸さんはそのルーツについても情報収集を続けています。

サフランは古くから女性特有の病気の生薬として使われていました。
医薬品としてのサフラン
含まれている成分はカロテノイド色素のクロセチンやクロシン、苦み成分のピクロクロシン、サフラン独特の香り成分サフラナール等。長崎国際大学薬学部教授薬学博士正山征洋先生の研究では以下のような報告がされ、研究が続けられています。
・クロセチンとクロシンによる抗腫瘍活性
・クロセチンによる血清コレステロールや中性脂肪の低下作用
・クロシンによる抗皮膚がん活性・抗大腸がん作用・脳神経細胞保護作用・睡眠作用など
(出典元:長崎国際大学薬学部教授薬学博士正山征洋先生著「サフランの神秘」)

昨年試験的に栽培したサフランを県内の洋菓子店や東京都内のレストランにサンプルとして配ったところ、その品質の高さに好評を得ました。現在は製品としての販売に向け、着々と準備を進めています。通常小瓶などに入って販売されていることが多いサフランですが、きれいな写真と活用レシピがたくさん載ったパンフレットを添えているので、サフランを使ったことのない人でも手に取りやすいですね。
販売用サフラン
さて、こちらの写真は先日静岡県沼津市で行われた静岡県東部4信金ビジネスマッチング商談会に出展した時の様子。(写真提供:Kitsune Farm)
マッチングフェア
企業のバイヤーの皆様も興味津々。(写真提供:Kitsune Farm)
バイヤー
一般の方にも大盛況でした。(写真提供:Kitsune Farm)
ブース大盛況
今後は他企業とも協力し、サフランを使ったお茶や洋菓子の販売も検討しているとのこと。
こちらは試作品のサフランキャンディ。
キャンディサンプル
サフランの割合が異なる2種類、私も味見をしてみました。どちらか1つを選び、峰岸さんと私の意見は同じ!順調にいけば私が選んだキャンディが製品化されます。私も店頭に並ぶのが楽しみです。

将来的には花粉を使った養蜂や、花びらを天然染料とする活用法なども検討しています。また、サフラン栽培は特別な設備や技術がなくてもできるため、農福連携の取り組みの1つになると考え、実際すでに笛吹市内の社会福祉施設利用者の協力も得ながら栽培に取り組んでいます。

峰岸さんは「サフラン栽培は未知の領域。本業以上に挑戦したい気持ちはあるが、やってみなければわからない。でも手ごたえは感じている」と力強く語ります。
峰岸さん
本格的な販売は来年からですが、すでに3月6~9日には幕張メッセでのFOODEX JAPAN 2018への出展が決定。サフランをより身近なものに!と、情報発信も積極的に行っています。今後の山梨県産サフランに期待してくださいね!
黄金色の素
後編ではサフランを使った料理を東京都のまつのベジフルサポーター増田智子さんが紹介してくれますのでお楽しみに!

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。

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