まつのベジタブルガーデン

山形県生垣が食材に?!江戸時代から食されてきたウコギ

伝統野菜・食文化

山形県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ鐙谷貴子です。

鳥海山の雪も溶け始めました。その溶けた雪形は、おじいさんが腰をかがめて種巻きをしているように見えることから「種まきじいさん」と呼ばれ、それが田植えを始める合図と言われています。その溶け方を見ると、お田植えはもう少し先のようです。

さて、今回は山形県の在来作物の一つとして守られているウコギのご紹介です。
ウコギは中国名の「五加(うこ)」からきたといわれており、山形県の南の米沢市、その周辺地域には上杉鷹山公が推奨された生垣のヒメウコギがあります。このウコギには鋭いトゲがあるので、人畜の侵入を防ぐのに好都合なだけではなく、葉は食用になり、根は五加皮と呼ばれ、滋養強壮などの薬効をもっているそうです。米沢藩の医者たちが飢饉災害のさなかに、庶民の命を守るためにウコギを食生活の指導書を藩に上申したと言われていて、200年もの長い間市民に親しまれてきたウコギが時代を経て受け継がれています。

日本最古の和漢薬名辞典「本草和名」(918年)には五加が記載され、「日葡(にっぽ)辞書」(1603年)にウコギの葉は和えものにされるという記述があるそうです。江戸時代の初めには一般的な野菜として食べられていたと考えられ、江戸時代の料理書には、ウコギの和えもの、汁、おひたし、飯、お茶、酒、餅、なます、という記載があるようです。

今回は、産直で販売している酒田市生石(おいし)の池田稔さんを訪ねました。池田さんの先代から生垣として道路沿いに植えてあったというウコギ。昔から春になると摘み取り、天ぷらやお浸しなどで味わい、乾燥させてお茶として飲んだりしていたそうです。
ウコギは地元の言葉で「きどい」(ほろ苦い)と表現する味、そして色を生かした料理が特徴です。新芽を摘んでも次々と新芽を出すほど生命力と環境適応力が強く、日当たりを選ばないため、どこでも栽培が可能。栄養成分は、カルシウム、ビタミンA,C,が豊富で、クロロゲン酸、ルチン、ポリフェノールも含まれています。それではウコギのほろ苦い味と色を生かしたレシピをご紹介します。

まずは定番【ウコギの混ぜご飯】。普通に炊いたご飯に、茹でたウコギをみじん切りにして加えます。
ほんのりとした苦みが楽しめます。

【ウコギの白和え】固めに茹でたウコギを荒みじんにして水きりした豆腐と白和えにします。白ゴマ、塩、醤油などで味つけします。今回はクコの実を飾りました。

【ウコギのふわふわオープンオムレツ】スキレットなどで卵を焼いて半熟状態で、生のウコギを乗せて余熱を通します。

【ウコギと卵のスープ】お好きなお出汁に卵を流し入れたらウコギを入れて加熱を止めます。器に盛り付けてスライスしたトマトと粉チーズをかけます。
【ウコギと新玉ねぎの春の香りの天ぷら】ウコギと新玉ねぎ、春ならではの天ぷらです。

春の香りを感じるランチはいかがですか?

苦みのある春の食材には、冬の間の老廃物をデトックスさせる効果が期待できます。生垣として利用されているウコギを食材にした200年前の上杉鷹山公の知恵と節約術が、今も語り継がれ、山形で生き続けています。そしてこれからも後世に繋いでいきたいと思います。

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