まつのベジタブルガーデン

鳥取県『名探偵コナン』の町で進化を続けるフルーツトマト

まつのベジフルサポーターレポート

鳥取県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエ上級プロ・アスリートフードマイスター2級の長島明子です。

梅雨の晴れ間に、鳥取県北栄町にある「むらおかファーム」を訪ねました。鳥取県の中央に位置し、日本海に面する北栄町は、平成17年、北条町と大栄町が合併して誕生しました。人口は約15000人、北条町は砂丘長いもや北条ワイン、大栄町は大栄スイカが有名で、農業がとても盛んな町です。

農産物の種類が豊富ですが、この町で今一番有名なのは、この人かもしれません。

名探偵コナン。北栄町は、名探偵コナンの作者である青山剛昌さんの出身地で、町のいたるところにこのようなモニュメントがあります。


むらおかファームはこれらのモニュメントのある由良駅周辺から7キロほど離れた、日本海を臨める景色のよい場所にあります。むらおかファームは、露地とハウスをあわせて栽培面積は約150アール。ハウスを18棟所有しており、このうち6棟でフルーツトマトを栽培しています。

今の時期は、むらおかファーム代表の村岡武士さんと奥様の恵子さん、4名のスタッフの方が朝早くからトマトの収穫出荷の作業に追われています。作業のピークでお忙しいにもかかわらず、快く取材を受けてくださいました。

(村岡武士さんと奥様の恵子さん)


(スタッフのみなさんと村岡さん)

実は、村岡武士さんと私の出会いは7年前のこと。マルシェに出品予定の村岡さんのフルーツトマトを味見した時、あまりの美味しさに「このトマトを作った人に会いたい」と私が押し掛けました。その後、マルシェで一緒に試食販売をし、毎年トマトの収穫時期にハウスを訪問。この7年間で、私が講師を務める料理教室やセミナー、レストランイベント、研修会などで村岡さんのトマトを紹介してきました。

改めて村岡さんにフルーツトマトを栽培する理由を尋ねました。「恥ずかしい話ですが、昔は野菜が苦手でした。そんな私が13年前に出会ったのがフルーツトマトで、その魅力にどんどんはまっていきました。昔の私のように、トマトが嫌いな子どもがパクパク食べられるトマトを作りたい。私の作るトマトを子どもたちが『おいしい!』と笑顔で食べるのを見るのがうれしくて、フルーツトマトにこだわって栽培しています」

村岡さんのフルーツトマトの試食販売で、子どもが試食用のトマトを何個も食べ続けて親御さんから注意されるのを、私も見てきました。これこそ、村岡さんがこだわる「子どもが喜ぶトマト」

早速ハウスの中におじゃましました。

村岡さんは栽培するトマトの品種を毎年少しずつ変えています。今年栽培しているのは、大玉、中玉、ミニを合わせて10種類です。


種類によりますが、フルーツトマトの糖度は8.513度だそう。どれも皮が薄く、食べた時に皮が口に残らないことを重視しています。 


村岡さんのトマトづくりのこだわり、その一つ目は水分量の管理。トマトは水をあげすぎると味が落ちるため、水分量を徹底して管理しています。通常ハウス栽培ではトマトの背の高さと同じくらい根が横に広がり、ハウスの外まで根が張ってしまうので、雨が降ればトマトが根から必要以上に水を吸ってしまい、実が裂果したり、糖度が落ちてしまいます。 

それを防ぐために、村岡さんは「隔離ベッド」というオリジナルの設備を手作りしています。隔離ベッドは、深さ1m、幅1m、長さ約50mの巨大なプランターのようなもので、内側には止水シートを付けて、根域を制限し、外から余分な水分を吸収しないようにしています。隔離ベッドは、手作業で土を掘り起こして作り、ハウス1棟分を作るのに1ヶ月、6棟分を完成させるには半年以上かかったそうです。

普段の水やりについても、「点滴チューブ(チューブの所々に小さな穴があいたもの)を使い、ゆっくりと土に水を与えます。水の量はトマトの成長時期によっても変わりますが、トマトが欲しい水分量を教えてくれます。例えば、葉っぱの巻き具合、葉のしっとり感、昼間のしおれ具合、朝露の量、葉の角度、葉や樹の色、果実が色づく前の緑の色合いなどを見て、天気と相談しながら、毎日かん水の必要量を変えています」と村岡さん。水の量ひとつとっても、想像以上の繊細さです。

(チューブに小さな穴がいくつも開いており、その穴からぽたぽたと水が流れます)

(葉のしっとり感を手で触って確かめます)

こだわりの2つ目は肥料。メーカーに特注した村岡さん専用の肥料は有機100%で、海藻をふんだんに使い、カツオの粉末を入れて旨味をきかせているところにこだわりがあります。細かい粉末にすると、肥料を均等にまくことができ、土になじむのも早いそうです。まき方にもコツがあるとのこと。


(海藻を粉末状にした肥料)

(カツオを粉末状にした肥料)

こだわりの3つ目は土。村岡さんは隔離ベッドの上を決して歩きません。トラクターなどの重機も使いません。その理由は「森をイメージしています。森の中を歩くのは猪や狸といった小動物くらいで、森は落ち葉が堆積して歩けばふかふかです。その環境を隔離ベッドの中に再現しています。だから、隔離ベッドの土は簡単に手で掘り起こすことができますよ」

私も実際に土を触らせてもらうと、手がどこまでも入っていくやわらかさでふかふかです。隔離ベッドの上を歩かないのは、ハウス外からの病害虫を持ち込まない対策でもあるとのこと。

連作障害について尋ねると、「同じトマトを年に2回、10年以上連作していますが、隔離ベッドの環境が良いせいか、年々野菜が美味しくなっています。土が成長しているみたい。今では土が大切な財産です」と笑顔で答えてくださいました。 

こだわりの4つ目は、収穫のタイミング。村岡さんは樹熟にこだわります。樹で熟してから収穫し、さらに追熟させると美味しさが増します。収穫のタイミングは果実の色で判断します。同じ赤でも微妙に違い、少し濃いめの赤色で収穫します。果実全体が真っ赤になった瞬間が一番おいしく食べられる「取り頃」とのことです。

(画像提供:むらおかファーム)              

他にも、食味をよくするため、ゼリー部分の種を大きくしないように育てたり、果房の3段目から目指している糖度になるよう調整しながら栽培するなど、村岡さん独自のこだわりはまだまだあります。

そんなむらおかファームのこだわりと愛情がたっぷり詰まったトマトは評判も上々で、県外や首都圏などからも取引依頼があります。近畿地方では、京都のこだわり食材専門店「ヘルプ」で販売。鳥取県内では、中部の農産物直売所、東部は鳥取市の「地場産プラザわったいな」で購入できます。なお、むらおかファームのフルーツトマトの出荷は、5月下旬〜7月中旬と9月上旬〜12月中旬の2シーズンです。


最後に今後の目標をお聞きすると、「今の栽培技術に満足することなく、日々探究心を持ち、さらなるおいしさを追求しながら、楽しく農業をしていきたい。野菜はきちんと作れば驚くほど美味しくなります。本来の野菜の味を多くの方に知ってもらい、みんなに野菜を好きになってもらいたいです」と力強く語る村岡さん。むらおかファームのフルーツトマトは年々美味しさが増していますが、これからも進化し続けることを確信しました。

鳥取県のまつのべジフルサポーター・野菜ソムリエ上級プロ・アスリートフードマイスター2級の長島明子でした。

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