提携産地レポート

長野県畑からテーブルまで。「食」のリレーをつなぐ

今月初め、まつのが長年お取引いただいているシズラーの本部・店舗の産地視察に同行させていただき、カラフルミニトマトの圃場を訪問しました。

訪れたのは長野県上田市の須藤物産。シズラーのサラダバーで人気のカラフルトマトを栽培する農場です。

圃場では一部がシズラー向け専用エリアとなっており、「Sizzler TOMATO GARDEN(シズラートマトガーデン)」のフラッグが。

長年の産地のような光景ですが、実は供給は始まったばかり。昨年6月に産地よりミニトマトのサンプルをいただき、シズラーのサラダバーアイテムにとご提案したことが始まりでした。

8月には弊社の松野社長も現地を訪問。

その2日後には都内のシズラーの店舗で生産者、シズラー、農業資材会社、弊社を交えた勉強会が行われ、商品のこと、物流のこと、価格のことなどをお互いに意見交換。

ネックになったのは価格と、業務用としての安定供給体制づくりでした。当時の須藤物産の主な出荷先は高級スーパーなど。フルーツミニトマトとして付加価値をつけて販売している商品、当初の価格はとてもサラダバーに出せる単価ではありませんでした。

高価格のトマトをレストランのシズラーにいかに供給するか。収穫・選別からパッケージ、販売単位、出荷・物流まで、すべての工程の見直しが必要でした。生産者、シズラー、弊社の3社が一体となって改善を重ねること半年。いろいろな経費を見直すことで、コストも下げていただき、ついにテスト納品がスタートしました。

当時、シズラーの購買責任者の方からいただいた言葉が心に残っています。「なるべく長いお付き合いを考えていきたいため、無理をして途中でうまくいかなくなるよりも、しっかり準備して導入できる段取りをしてください」。

スタート当初は1度に納品するロットが大きすぎたり、発注タイミングが合わずにお店で商品が滞留してしまったりと問題点がありましたが、少しずつ改善。

その後は、お客様にも好評で徐々に取扱数量も増えてきました。

農場の方々もさっそくお店に来られ、自分たちのトマトがどのようにお店に並んでいるか、実際に食事をして確認されていました。農場スタッフ30名のうち実に25名が参加!

写真でおわかりになるでしょうか。須藤物産のスタッフは全員女性なのです。女性の感性や気づきを農業生産に活かす方針のもと、集った方々は皆さんとても意欲的。

サラダバーコーナーのPOPにある「情熱をもって育てられた甘くておいしいトマトです」という紹介キャプションに、「この言葉に恥じない仕事をしなければ」と思いを新たにされていました。

そしてテスト納品開始から3カ月を迎えた今月、お店のスタッフの方々が、お店に並んでいるトマトがどのような環境で、どんな風に作られているのかを視察。そこで目にしたのが、冒頭でご紹介した「シズラートマトガーデン」とフラッグが掲げられたハウスの光景です。

圃場の入口には素敵な看板もあり、本部の方、お店の方のテンションも上がります。

そこからはもう、驚きの声と一緒に、栽培方法、品種の質問がひっきりなしに飛び交います。

最先端の技術を応用したハウスは、隅々まで管理が行き届いています。温度や湿度、その他全ての管理はAI(人工知能)を利用し、トマト1本1本にあった管理をしています。


GAPの話題に触れると、多くの産地、J-GAPを取得していても、収穫する篭や機材が汚れていたりするものも多いなか、こちらの産地は使用後、全ての機材を洗浄、消毒、管理しているのでどれも新品のようにピカピカです。

表だけではなく、側面、裏面もこの通り。

こういう管理一つとっても、出来上がるトマトがとても大切に育てられている事が伝わります。

養液の貯蔵タンク。「どうしてこんなに大きいのか?」

「震災のときに、約2週間、何も出来ない状況になった。これを教訓にして、最低2週間は保管できるタンクで栽培、出荷を止めないようにするため」なのだそうです。

出荷のトマトは毎日、特定要素の検査をして、データを取り、病害虫の被害を未然に防いだり、品質の安定につなげています。

あっという間に視察の時間は終了。

産地の方との交流では、収穫されたミニトマトがどうやってお店まで届くのか、産地を出てから見えない部分のお話をさせていただきました。

「皆さまが収穫したトマトは、翌日のランチにはお客様の前に並びます」とご説明したところ、とても驚かれていました。

「センターで在庫はしないのですか?」「はい、もちろん」。できるだけ鮮度がよいうちにお店にお届けするのが私たちの仕事です。

具体的には、産地で午前中に収穫し、午後に荷作りして出荷された商品はトラックで東京に向けて出発。日付が変る前に、まつののセンターに納品されます。

センターに届いた品物はそのまま、お店通常の野菜の注文品と一緒に仕分けられ、早朝センターを出発。お店のオープンに間に合うように各店舗へ納品されます。

一方、シズラー店舗スタッフの方々は、皆さん最先端の圃場を目の当たりにしての驚きと、お店に並ぶトマトが育つ環境に驚いたこと、また農場の方々の働く姿勢に感銘を受けたと口をそろえておっしゃっていました。

この視察の翌日には種苗会社の役員の方とも『種からテーブル』までのバーティカルマーチャンダイジングの取り組みについて打ち合わせを行いました。

この度の視察を通じて、つくり手と使う側の意思疎通が図れ、少なくとも視察の場にいる皆さんが同じ方向を目指し、今後も取り組みが出来る関係になれたような気がします。

そしてこの両社の橋渡しができたことを非常に誇りに思いました。これからも一つでも多くの産地、お客様とこのような取り組みが出来る関係を構築して行きたいと思います。

皆さんが大事に育てた野菜を多くの方々に楽しんで頂くため、産地とお店の距離を近づけるために何ができるのか、私たちがしなければいけないことは何か。

確かにいえるのは、今の状態はまだまだ全く足りていないということです。何を必要とされているのかを、もっと掘り下げて考えていかなければならないと改めて思いました。シズラー、須藤物産の皆さま、ありがとうございました。

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