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2011年 4月 19日 (火)

出荷制限解除前日に【茨城県四季菜くらぶ:ほうれんそう(1)】

by ちゃーりー

今週日曜日夜、
国の定める安全基準値を超える放射線検出により、
行政より出荷制限要請が出されていた
茨城県産の「ほうれん草」が
北茨城市・高萩市を除き制限解除となりました。(かきな・パセリは県内全域解除)



茨城県の南西部、結城郡八千代町にある
「農事組合法人 四季菜くらぶ」

まつのに直接野菜を納めてくれている協力産地です。

春の主力野菜は、
レタス・サニー・グリーン・ブロッコリー、
そして・・・ほうれん草・・・

出荷制限が解除される前日、
代表理事の青木さん、
ほうれん草を作っている中村さんに会いに行っていました。

中村さんはほうれん草の他に小葱・枝豆も作られていますが、
毎年この時期に出荷するのは 「ほうれん草」のみ。
出荷制限を受け、出荷する野菜がなくなってしまう という状況に。



ハウスにいっぱいのほうれん草
いつもならウキウキする光景ですが、今日は違いました。

「次はここも刈り取って処分してしまわないと・・・
ここはもう出せない・・・
月曜日に解除されたとしても、
その頃には育ち過ぎて出せないからね・・・」


このハウス1棟で
5000束ほどのほうれん草が出荷できるはずでした。

検査をしても放射線数値は基準値以下
しかし、茨城県全域でのほうれん草出荷が制限されているため
出荷することが出来ない状態。




しゃがんでじっとほうれん草を見つめる中村さんの横で
何を言っていいのか・・・言葉が出てきませんでした。

ハウス栽培のほうれん草は、
通常収穫する時と同様刈り取った後、ハウスの外に出し廃棄します。
大切に育てた1茎1茎を
出荷出来ないのに、刈り取っていく気持ち・・・

「どうしようもない気持ち
大丈夫だとわかっているのに、出荷出来ず廃棄しなければならない。
保障してもらえるんだろう・・・と割り切って処理していくしかない。
お金の問題がどうってよりも
気持ち的に、そう割りきらないと育てたものを処分出来ない。
誰にどうあたってよいのか、怒りのぶつけ先もない・・・
保障申請に必要になるだろうからと、処分した圃場の写真を取り、
広さを測って記録にまとめる・・・それが今の仕事だよ・・・」


何とも言えない表情でそう話してくれました。

この表情に至るまで様々な葛藤があったのだろう と 
胸が苦しくなります。



廃棄されたほうれん草の一部。
枯れて黄茶色くなった葉は、まだ僅かにその面影を残していました。



袋詰めで忙しくしているはずの倉庫内
今は、誰一人いない、静かな空間。

いつもは出荷を待つほうれん草の特等席のはずが
空っぽのままの大きな冷蔵庫。

「今はパートも皆休んでもらってる。
 いつもはね、ここにこうやって座って、こっちで計量してさ・・・
 それなのに最近は・・・ね」




こちらは露地栽培の畑。
この一畝で、400〜500束のほうれん草が収穫出来ます。

収穫まではもう少し時間がかかります。
「もうすぐ出荷制限は解除されるし、この畑はきっと出荷出来るよ」 
中村さんの顔が少しほころびました。


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