まつのベジタブルガーデン

埼玉県慈姑の今昔

まつのベジフルサポーターレポート

いつの間にか年の瀬を迎え、まもなくまた新しい年がやってきます。お正月…楽しみの一つはおせち料理!たくさんの食材が使われますが、今回はクワイにスポットを当てました。あの形が何とも言えず愛らしい…さらに、なぜ慈姑と書くのか…どんな風に栽培されているのか…昔から興味が尽きない野菜でした。
慈姑
クワイはもともと中国原産、古代中国ではクワイが滋養強壮に富み、長寿の食材と考えられていました。日本へは平安初期に伝来、庶民たちに浸透し栽培も盛んになったのは江戸時代と言われています。まっすぐ天に向けて伸びた芽が「芽が出る=めでたい」「立身出世の象徴」「子孫繁栄」など、縁起のよい野菜としてお正月料理に利用されてきました。

面高(オモダカ)科の水性多年草で、水田や浅い池に生え、柄の長い矢尻形の葉が特徴です。大きな葉先の矢の形が、農作業に使う「クワ」に似ているところから転じて「クワイ」、また、「河芋」が転じてクワイと呼ばれるようになったなど、諸説あるようです。

漢字で「慈姑」と書くようになったのは、一つの根にたくさんの子がつくことから、子どもを慈しみ哺乳する母のようだとこの漢字を当てたといいます。

国内での2大生産地は、広島県福山市と埼玉県南東部。埼玉県南部の綾瀬川流域(現さいたま市、越谷市、草加市、鳩ヶ谷市、川口市周辺)は、天明6年(1786年)の大水害で、大湿地帯となって稲作が全滅。その後、明治後期に安行、野田村から種子を導入、この地が「青クワイ」の一大産地となりました。慈姑
クワイの種類には、青クワイ、白クワイ、吹田クワイと3品種がよく知られています。中でも一番多く出回っているのが古来種の青クワイ。そのほか京伝統野菜の京クワイ、加賀伝統野菜の神子原クワイなどが有名です。野生種に近い「吹田クワイ」は、なにわの伝統野菜。一時絶滅の危機に瀕したこともあり、現在は市場に出回ることがほとんどないそうです。

収穫の繁忙期を前に、さいたま市緑区の若谷真人さんのクワイ畑を見せていただきに伺いました。ご両親と一緒にクワイの生産をされている若谷さんは、野菜ソムリエ、埼玉ヨーロッパ野菜研究会の一員でもあります。
慈姑
栽培は、6月下旬〜7月上旬に、水稲と同じ代掻きをした水田に種となる塊茎を植え付けます。 暑い夏を越し9月上旬から11月中旬、肥大したひと株に、30個ほどの子ども(塊茎)をつけ、葉が枯れて倒れた11月下旬〜12月が収穫の最盛期となります。
慈姑
クワイの収穫は、刈り取った地上部を圃場の外へ運び出すことから始まりますが、そのあと、田んぼの水路から水をくみ上げ、蓮根の収穫機を使って強力な水圧で土中のクワイを掘りあげます。水面に浮かんだ茎を熊手でかき集め、畦に積み上げて、クワイを1個ずつ外してコンテナに…。いくつものコンテナを運搬車で作業場まで運び、また1個ずつ芽を折らないようにきれいにしていくという、根気のいる厳しい手作業が続きます。
慈姑
「代々、クワイを栽培していますが、高齢化などもあって作付けは年々減っていますよ。今年は台風の被害や病害もあり3〜4割の収穫減です。植え付けてから収穫までには成長途中の塊茎を鴨に食べられたり、雑草がはびこったりと手がかかります。真夏の作業で大変なのが「葉かき」作業。腰を曲げ続けて茂った葉を根元から取り除き、風通しを良くして良好な環境を作ります。最も大変なのが収穫、水が張った田のなか寒さとの闘いになります。収穫後の選果選別は丁寧に1個1個綺麗にします。そして出荷先の好みの大きさにしっかり分けます。ただ、脈々と受け継がれてきた伝統のクワイ文化を絶やしたくないですね。生産者としての使命だと思っています!」と、クワイ農家のご両親の背中を見て育った、真人さんの心強い言葉が返ってきました。

腰を曲げ続けて茂った葉を根元から取り除き、風通しを良くして良好な環境を作ります。慈姑
最も大変なのが収穫、水が張った田のなか寒さとの闘いになります。
慈姑
収穫後の選果選別は丁寧に1個1個綺麗にします。そして出荷先の好みの大きさにしっかり分けます。ただ、脈々と受け継がれてきた伝統のクワイ文化を絶やしたくないですね。生産者としての使命だと思っています!」と、クワイ農家のご両親の背中を見て育った、真人さんの心強い言葉が返ってきました。

来年のため、種となる小さめのクワイは約半年間、平温に保たれた室(ムロ)などに保存され、植え付けを待ちます。因みに、「埼玉スタジアム」立地前は、「慈姑田」だったそうです。慈姑
真人さんにかわいいクワイをいただきました。
慈姑

慈姑
煮含めてこんな飾りも楽しい使い方です。
慈姑

慈姑

慈姑
クワイの成分は、約1/4が炭水化物ですが、絶対量としては少ないものの、野菜の中ではたんぱく質も多く含まれ、ビタミンB群(B1、B2、B6、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン)、ビタミンC、ビタミンE、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、セレン、モリブデン、鉄、銅、亜鉛、と驚くほど。中でもカリウムは10gあたり600mgを含んでいて、高血圧の予防・改善に有効です。ビタミンB群のビオチンは、皮膚の健康を保つ作用があり、筋肉痛の緩和や疲労回復にも役立ちます。
*注意:現代の食生活で過剰摂取が心配されるリンは、カルシウムの摂取が少ないと骨量や骨密度が低下する場合や、腎不全や腎臓結石を起こす場合があるそうです。

埼玉県まつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ柴田妙子でした。

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