まつのベジタブルガーデン

佐賀県まるで野菜の宝石!輝きを放つ「アイスプラント」

まつのベジフルサポーターレポート

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧です。

10年ほど前、佐賀大学が開発・発表した野菜「アイスプラント」。表面に水泡のようなつぶつぶがびっしり付き、プチプチとした食感と肉厚でシャキッとした歯ごたえがあり、みずみずしくほどよい酸味と塩味の効いた珍しい野菜です。
 
佐賀大学農学部が1985年に有明海干拓地の塩害土壌対策として、南アフリカ原産の「アイスプラント」の研究に取りかかりました。その後品種改良を重ね、野菜化に成功。2006年にはスワヒリ語で「水晶」の意味をもつ「バラフ」と名付けて生産・販売を始めました。アイスプラントは地中海沿岸やオーストラリアなどでは自生しており、古くからフランス料理の食材として使用されていたそう。

今回、私は佐賀県唐津市厳木町(きゅうらぎ町)で佐賀大学と九州電力で開発していた当時からの協力農家であった「農事組合法人 広農塾(現在:kukiふぁ~む)」の宮原十和子さん(75)を訪ねました。

宮原さんは夫で「kukiふぁ~む」の理事長である孝市さん(77)と共に、佐賀県のほぼ中央にある天山の麓でアイスプラントを栽培。2014年より「天山草」と名付け、自社ブランドとして販売しています。

現在も佐賀大学や九州電力、西九州大学などの協力者(顧問)から生産管理や加工の指導をもらいながら六次産業化まで行っています。その中でもアイスプラントの塩味の効いたアイスクリームは今まで食べたことのない味わい!野菜の旨みと塩分、ミルクとの相性の良さに驚きました。

アイスプラント(天山草)を乾燥させ粉末にした野菜パウダーを原料にした加工品は他にもあり、過去には西九州大学の新商品開発チームの生徒たちが発案した食塩無添加でつくる「天山チーズ」や天山草風味のクッキーなどもありました(チーズは販売終了)。

kukiふぁ~むでは、ハウス2棟(20アール程)の敷地で籾殻燻炭を使った溶液栽培をしています。土壌で栽培しないのは土に含まれるミネラルを吸う力が強すぎる(土壌中の重金属を蓄積してしまう)野菜であるため。栄養や塩も味の良くなるものを厳選して液体肥料に混ぜて与えます。アイスプラントの生産は手間と時間がかかるのです。こちらは播種してから半年の様子。

ゆっくりと生長する野菜のようです。

7〜9月はハウス内が暑すぎるため生産量は減りますが、通年栽培しており一年中切らさないようにしているそう。「佐賀大学が発表して3年ぐらいは順調だったが販売がうまくいかなくて廃棄も多かった。技術面では研究当時から生産しているので確立しているが、販売の方が大変」とのこと。

十和子さんは収穫しながら天山草の茎をシャクシャクと食べ、「う~ん、いいね。茎がおいしい!この野菜はとっても体に良いんですよ!」と笑顔で語ります。

機能性食品であるアイスプラントの注目すべき栄養成分は、野菜の中でも群を抜いて「ピニトール」という成分を多く含むこと。ピニトールが体内で分解されるとメチル基とカイロイノシトールとなり、インスリンに代わり糖の取り込みをサポートしてくれます。これは「インスリン様作用」と言われるもので生活習慣病予防に役立てるとして研究が進められています。

アイスプラントはピニトール以外にもカリウムやマグネシウムなどのミネラルも豊富で、疲労回復に良いリンゴ酸とクエン酸、脂肪を燃焼させるといわれるミオイノシトールも含んでいます。また妊産婦に欠かせない葉酸も豊富です。

私も収穫してみました!こちらは一般販売されていない大きめのアイスプラント(天山草)の葉。

国内に流通しているアイスプラントは芽の先が付いている小ぶりの葉のみで、この大きな葉はあまり知られていません。生産者の方々は大きい葉をもりもりと毎日食べているというのだから羨ましい限りです。

手の平サイズの大きいアイスプラントの葉はサンドイッチにすると絶品だそう。大きな葉も販売しなければもったいない!と感じました。

キラキラ光る水晶のような粒は大きいサイズの葉の表にはあまりなく、裏にある粒も少し小ぶり。酸味と塩味は通常のアイスプラントより少ないものの、肉厚のある食感やぷちぷちとした舌触りは同等で、酸味をあまり感じないので食べやすいのが特徴です。

存在感のあるサンドイッチが作れること間違いありません!

圃場には葉の先がフリル状で可愛い大きな葉がたくさんあり、今後のアイスプラントの可能性を感じました。生産者の方々も希望があればどんどん販売したいとのこと。

なによりも驚いたのは保存性が良いこと。収穫する際の切り口が一切変色しません。乾燥を防ぎ、冷蔵庫の野菜室で保管すると2週間以上も日持ちするとか。本当にみずみずしい野菜です。

私はもともと「唐津産天山草そのままサラダ」という商品を時々購入して、これまではサラダとして食べていましたが、今回いろいろな食べ方を教えてもらいました。

後編ではアイスプラント「天山草」を使った調理法の数々をご紹介します。キラキラとした宝石のように光り輝く「アイスプラント」、その美しさとおいしさをたくさんの方々に知って食べてもらいたいです。

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧でした。

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