まつのベジタブルガーデン

北海道十勝の冬マンゴー「白銀の太陽」収穫スタート!

まつのベジフルサポーターレポート

北海道のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエの福島陽子です。

今回は、真冬の北海道でマンゴーを生産するという、壮大なプロジェクトをご紹介致します!
十勝 マンゴー 白銀の太陽
プロジェクトを推進するのは北海道十勝(とかち)の会社「ノラワークスジャパン」。十勝ならではの長い日照時間、融氷資源、モール温泉熱など、十勝の自然エネルギーを効率的に活かせる大型のビニールハウスを設計し、生育時期を調整するという画期的な栽培方法でマンゴーを作っています。

この冬マンゴーは「白銀の太陽」。真冬の北海道で南国の果実がどのように作られるのか大変興味があり、十勝音更(おとふけ)町にある収穫目前のハウスを訪ねました。

この日の十勝は最高気温2℃でしたが、ハウス内の温度はなんと33℃!外との気温差は30℃以上ありました。

「株式会社 ノラワークスジャパン」代表取締役の中川裕之さんにお話を伺いました。中川さんは自然・再生エネルギーを活用し、マンゴーなど農産物の生産や販売、十勝の産業構造を変えるような画期的な栽培研究をされています。病害虫のいない冬に農産物を作ることが本格的にできれば、殺虫剤などの対策が不要である事や、冬季の農閑期を作らない事で農業従事者の通年雇用の道が拓けるなど、革命的なメリットをもたらします。

「クリーンなエネルギーで、安心・安全なフルーツが出来ます」と、中川さん。マンゴーは冬に本来の寒さ(10℃近く)を体感すると12~1月に花を咲かせ、2~3月に小さな実を付け、5月~6月に完熟で出荷されます。(宮崎県におけるマンゴーの生産方法)

一方、北海道十勝の「白銀の太陽」は、初夏の6~7月に長い冬季に巨大な氷室に貯蔵した天然の雪で「雪氷冷熱」し、冬だと感じさせ、逆に冬は名湯十勝川温泉の「温泉熱」を利用してハウス内を南国の環境にし、12月に収穫最盛期を迎えます。なにしろ冬季の十勝は最低気温が マイナス30℃以下を記録するほど厳しい冷え込み。地中にパイプを敷いて温泉を循環させたロードヒーティングを作り、生育に適した地温と室温を保っています。それでも温度が足りない時は、一般家庭から出る廃油をボイラーで焚いて温めます。

「雪氷冷熱」とは、冬の間に積み上げた雪の上に、木の皮を砕いたパーク材を20~30cm被せて断熱保存し、夏にはその雪氷で水を冷しマンゴー畑の下にパイプで循環させ、温度を下げる仕組みです。今年、雪氷の貯蔵施設も新設され、より効率的に雪氷冷熱を行えるようになりました。冬の間に積み上げる雪氷は、9mもの高さになります。

マンゴーを完熟させ色づけるには太陽の光が欠かせませんが、十勝の日照時間の長さと湿度の低さはマンゴー栽培に適しています。年間を通じて晴天の日が多く「十勝晴れ」とも呼ばれ、特に果実の成熟から収穫期にあたる秋から冬にかけて晴天が続きます。南国のような強すぎる日差しや高温多湿によって出る日焼けやヤニを防げるため、見た目も綺麗で風味豊かな美味しいマンゴーを作ることが出来ます。

北海道の冬に輝く「白銀の太陽」。栽培を始めたのが2010年11月。8年目の今年は2棟のハウスを新設され、計3棟のハウスでマンゴーの木を栽培しています。12月初めに本格的に収穫が始まり、1月半ばまで出荷。

こちらは11月下旬に撮影された今期の完熟第一号のマンゴーです。実がネットへ落ちたら、完熟の印。白銀の太陽は糖度15度以上にもなります。これは宮崎県の完熟マンゴーと同程度の高い糖度。品種はアーウィン種で、宮崎から来た10本の苗木から始まった夢のプロジェクトは、北海道産のフルーツとして商品化されるまでに成長を遂げました。

度重なる実験の結果、実を付ける前の生育段階では湿度も必要なことがわかり、苗木の育成ハウスで自動散水の様子も見ることが出来ました。幻想的な光景。十勝マンゴー誕生のきっかけは、農林水産省のイベントで宮崎県日南市を訪れた際、宮崎産マンゴー生産者の永倉さんと出会ったこと。永倉さんの夢はクリスマス時期に宮崎でマンゴーを出荷する事。でもそうするには真夏の宮崎に冬の環境を作らなければなりません。「北海道ならそれが出来るかもしれない。」

中川さんも最初は驚いたそうですが、街づくりの視点から「十勝でマンゴー栽培を始めたら、十勝が変わる!チャレンジしてみよう!」賛同する仲間を集め、この壮大なプロジェクトをスタートしました。当時、中川さんにとって農業は初めての経験。決意から1年半、宮崎県の農場で技術指導を受け、十勝の農場に戻ってからも試行錯誤を重ね、現在のマンゴー栽培の基礎となる仕組みを構築されました。

「このプロジェクトを始める時から、石油には頼らないと決めていました。」中川さんの前職は石油販売業。エネルギーについてよくご存知だからこそ、環境へ負荷を与えないクリーンエネルギーで十勝のマンゴーを育てたいという強い思いがあったそうです。

今後の目標を中川さんに伺うと、「この十勝を南国フルーツの生産地にしたいので、生産者を増やすのが目標です。そのためには、このノラワークスジャパンが利益を出せるような形と、マンゴー栽培に必要な設備を開発し、生産者にその情報を渡す、農業試験場のような役割りでありたい。」

十勝農業の冬期間の雇用を生み出すことで、一般的に畑が雪の下になる冬季には仕事がなくなる北海道の農業従事者が、通年で働くことが出来る場を作る、画期的なプロジェクト。近いうちに真冬の十勝で、南国フルーツ狩りが出来るかもしれませんね!

「白銀の太陽」は、主に大田市場や大阪の市場、お菓子屋さん、音更町のふるさと納税返礼品、またインターネット販売用に出荷します。収穫量はまだ少ない中、東京の某有名老舗フルーツ店に「世界一美味いマンゴー」と言わしめた高品質マンゴー「白銀の太陽」。収穫前から予約殺到で貴重なものとなっていますが、ご興味ありましたら、ぜひホームページをご覧くださいね。

北海道のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエの福島陽子でした。

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