まつのベジタブルガーデン

山梨県積算温度が色づきの決め手!8色の彩りパプリカ

まつのベジフルサポーターレポート

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。

日本でトップクラスの日照時間を誇る山梨県北杜市明野町浅尾地区。今回はそんな浅尾地区で育てられているパプリカをご紹介します。まずはこちらにご注目!

赤や黄、橙のパプリカはよく見かけますが、白・緑・紫・茶・黒など…株式会社ベジ・ワン北杜ではこれら全てのパプリカを栽培しています。

ベジ・ワン北杜は、埼玉県さいたま市に本社をおく株式会社サイサンのグループ会社です。家庭用のLPガスや産業用の一般高圧ガス、医療分野の医療用高圧ガスなど、様々なガスを取り扱っているサイサンが、なぜ北杜市明野の地でパプリカの栽培を始めたのでしょう?

サイサンが農業に参入したのは2011年。取引先だった仙台の会社のガラス温室が東日本大震災の津波で流されてしまい、その復興のお手伝いをしたのがきっかけでした。そのノウハウを活かして農業を進めようと考えたときに思いついたのがパプリカの栽培。現在国内に出回っているパプリカのほとんどはオランダや韓国などからの輸入が多く、国産はまだ少量。そこに市場拡大のチャンスがあると考えたのです。

今回お話をうかがったのは代表取締役社長の植竹利男さん。現在、植竹さんの他に社員が6名、パートが約30名、アルバイトが数名働いており、北杜市内にある農業大学校の研修生の受け入れなども行なっています。

栽培施設全体の敷地面積は約2.4ヘクタール。そのうち栽培面積は東京ドームのグラウンド面積の約1.4倍にあたる約1.7ヘクタール。オランダ式のフェンロー型と呼ばれるガラス温室で、骨材を細くすることで遮光性を高め、軒高を約6メートルと高くすることで換気効率を上げています。また、冬は積雪する北杜市の気候に合わせ、融雪パイプも備えています。

温度・湿度・養液・二酸化炭素濃度などは、オランダPRIVA社の環境制御システムできめ細かく管理。暖房設備のガスボイラーは、親会社であるサイサンのものを使用し、二酸化炭素も同社から供給されています。

ロックウール養液栽培方式を採用し、養液に使用する原水には雨水を使用。巨大なタンクに雨水を貯め、成分をチェックしながら養液として使います。雨が少なく水量が足りない時は水道水で補うこともありますが、雨水の成分のほうが安定していて使いやすいそう。養液は閉鎖系の循環システムで、廃液を外に出さない環境にやさしいシステムです。

温室の天井には開閉式の窓があり、約4.2メートルの高さのパプリカは1本1本丁寧に誘引されています。

6月中旬~翌年2月上旬が収穫期で、収穫量は約380トンを目標にしています。また、温暖な茨城県稲敷郡美浦村にある「株式会社美浦ハイテクファーム」と提携し、通年の国産パプリカ栽培体制を確立しています。

収穫はこのような器具を使い、へたを落とさないようそっと切ります。

収穫は高所作業になりますので、リフトに乗る際、ヘルメットは欠かせません。

収穫したばかりの橙パプリカはツヤツヤ!

カゴの中をのぞくと、まだ緑色が残っているものもありました。橙・赤・黄の3色は、今の時期70~80パーセントくらい色づいたら収穫し、生活者の手に届くころに綺麗な色になるよう調整しています。この色づきの割合は、冬に向け気温が低くなるにつれ、増えていきます。

中にはこんな実も。

これを見ると、橙パプリカが緑色から橙色に変化する様子がよくわかりますね。

栽培しているパプリカの大部分は流通量の多い赤と黄、そして橙。それ以外の5色は少量ずつ育てています。こちらは赤。恥ずかしそうに隠れているよう。その後ろにはまだ色づいていない実が見えますね。

黄も見つけました。奥の方がまだ緑です。収穫まではもう少し。

こちらは白。「ビアンカ」という品種です。そろそろ収穫できそう。

上の方にあるのが黒の「マブラス」。

こちらは「ブラウニー」という品種の茶色いパプリカ。名前の由来はやっぱりあのブラウニー?(笑)

国産パプリカは品種ではなく色で識別されるのが主流。こちらでも、赤だけで「アルテガ」「ナガノ」「UN-506R」など6品種、黄も4品種育てていますが、その土地や気候によって栽培しやすいものとそうでないものがあり、この地に合うものを探し、試行錯誤しながら栽培を行っています。

今年は北杜市で栽培を始めて3期目のシーズン。1期目・2期目共天候の影響で目標の収穫量には及ばなかったそうですが、今年はかなり順調に進んでいた矢先、台風24号が山梨県を襲いました。ハウスの損壊などの被害はありませんでしたが、長時間の停電により、換気システムが作動しなくなり、その結果閉め切られたガラス温室の中の温度が50度近くまで上昇した状態が続きました。上の葉が黄色くなってしまっています。

こちらの葉っぱも元気がない様子。

パプリカの色づきには積算温度が大きく関係しており、高い温度が続くとサイズが大きくなる前に色づいてしまいます。その結果小さいまま収穫せざるを得なくなってしまいました。「まさかあんなに長い間停電になるなんて」と、植竹さんは肩を落としつつも、今回の経験を踏まえ「今後はUPS(無停電電源装置)の導入も視野に入れていく」と力強く語りました。

続いて選別の様子を見学。収穫した大量のパプリカを突起のあるベルトコンベアに乗せ、周りの汚れを落としながら進めます。

それが終わると1つずつ坂を上り…

重量毎にカゴに入れられます。

こうして選別されたパプリカは1つずつ袋に入れられ、出荷されます。

さて、今回は8色の彩りパプリカを使って、それぞれの色を活かした料理を作ってみました。まずは紫。と言っても中まで紫ではありません。

黒米を入れた炊いたご飯を詰め、バターチキンカレーを入れた橙と並べてハロウィンプレートに。

次に茶。少し赤みがかったように見えますが、こちらは未熟果の状態で出荷しており、時間が経つと赤色に変化します。

肉詰めにし、付け合わせに緑のカップを添えました。火を入れたことにより、茶色はより赤色に近くなっていますね。焼いている間に積算温度が上昇し、色づきが進んだのかも。

続いて黒。中は完全に緑です。

モノトーンの2つを並べました。黒はきくらげと一緒にごま油を使った中華風の和え物に。火を通した黒いパプリカは緑になります。そして白は青椒肉絲にしました。むしろ「白椒肉絲」というのが正しいでしょうか(笑)

最後に定番の黄色と赤色のカップを並べました。黄色は洋風茶わん蒸し、赤色はパプリカとパプリカパウダーを使ったグヤーシュと呼ばれる赤いスープ。ハンガリー料理の定番です。

これだけあると、食卓が彩り豊かになりますね。現在はこちらのパプリカは、山梨県内のスーパーやホテル、飲食店などで取り扱われているほか、インターネットからも購入可能です。ベジワン北杜のホームページをぜひチェックしてみてくださいね。

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。

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