まつのベジタブルガーデン

佐賀県味と香りが自慢!ジューシーな「伊万里梨」(前編)

まつのベジフルサポーターレポート

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ・食育マイスターの前田成慧です。

日本列島を縦断した台風21号による暴風と豪雨の被害には胸を痛めております。一日も早い復旧・復興を心から願い、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

佐賀県の北西部に位置する伊万里市は、果樹栽培の盛んな町。特に南波多町は「フルーツの里」と呼ばれ、梨やぶどうを積極的に栽培しています。今回、豊かな香りと果汁、歯ごたえが特徴の「伊万里梨」を取材しました。

「伊万里梨」は、品種でいうと「幸水」「豊水」「あきづき」「新興」「新高(にいたか)」「王秋」「愛宕(あたご)」などの総称で、名前の通り「伊万里市」で栽培されている梨を指します。上の写真は「豊水」。伊万里市で栽培される「幸水」はトンネル栽培でいち早く出荷され7月中旬から出回り、「豊水」もお盆明け頃から出回ります。

酸味が少なくさわやかな甘さの「幸水」、「豊水」は酸味と甘みのバランスが優れており、さっぱりとした甘さでジューシーな味わい。シャキッとした歯ごたえの後にみずみずしい果肉がジュワッと口いっぱいに広がります。香りも豊かで、柔らかく緻密な果肉は歯ごたえもほどよくあり、濃厚な味わいです。

今回取材したのは、30年間梨栽培一筋の佩川(はいかわ)マツミさん。約16反(158.4アール)の梨畑を家族3人で管理しています。露地もハウスもトンネル栽培も行い、7〜11月の間に様々な品種の「伊万里梨」を出荷しています。

お盆明けから収穫を開始した「豊水」、今年は生長が早いそうです。「昼は天気が良くて、夜は冷たいほうがよか(良い)。最近天気がよかけん、早く熟してしまう。今年は少し小ぶりばい」と佩川さん。収穫の目安は、大きさよりも熟度を確認する作業が多く、「なんべんも触って確認する。これが美味しかごとしとる」と、熟した実は触ると表面のざらざらが取れてつるつるとしていることを教えてくれました。

収穫する際は手首をひねり、後ろ側まで色がついているか目視で確認。「梨狩りのお客様は回さんで採るから緑かことが多いけんね。後ろに色がついとったらよか」と語ります。果実をじっくり見て、しっかり全体が熟しているかを確認することが大事なのですね。未熟な果実は表面が緑色で、表皮に砂のようなざらざらしたものが多く荒いそう。

今回、「梨の収穫はタイミングが命」だと知りました。梨狩りの時には佩川さんに教えてもらった収穫のポイントを思い出しましょう。

収穫の際、長めに切った枝をさらに短く切ります。軸で梨同士がキズ付かないようにするためだそう。こちらの農園で収穫された梨の8~9割は南波多の梨選果場へ運ばれます。

ところで、梨の花をご覧になったことはありますか?4月になると我が家の周囲に広がる梨の畑では、満開の梨の花を見ることができます。梨の花はバラ科でとても可愛らしく、山間には梨の花のじゅうたんがが広がっています。

また夜の南波多町は、梨畑の横を通ると黄色いライトが等間隔に光っています。黄色の縦長い棒のようなものが虫除け(蛾)の忌避灯(きひとう)。蛾が嫌いな波長が出ていて、蛾が寄って来にくくするそうです。梨の木は病気や虫がつきやすいので、梨農家は年間を通じて気が抜けません。

山の奥の方の梨畑では時折「パーーーン!」と鋭い音が鳴り響きます。カラスを退かせるため、音で威嚇しています。獣害虫の被害も多く、足元にはイノシシ除けの電気柵、頭上には鷹の姿を模した凧が飛びます。それだけ、甘く美味しい梨を狙ってやってくる獣は多く、梨農家は自然と共生しつつ、天敵と日々戦っているのです。

自然豊かな山間の南波多町で丹精込めてつくられている「伊万里梨」。一度食べると忘れられないやみつきの味わいです。シャキッとした歯ごたえとジュワーッと広がる甘さ、のどを潤してくれる多汁の梨。「甘くてジューシーな美味しい梨を届けたい!」という想いと愛情が込められた「伊万里梨」の美味しさを多くの方に知ってもらいたいです。

生でシャキッとした歯ごたえで食べるのも良いですが、煮詰めて梨のチャツネを作りました。クラッカーにチーズとパンチェッタと梨のチャツネを添えたひとくちおやつをどうぞ。

後編では収穫された伊万里梨がどのようにお客様へ届けられるのか、選果場での最新機器での品質チェックの実態と梨まつりの様子をお届けします。

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ・食育マイスター前田成慧でした。

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