まつのベジタブルガーデン

山梨県「甲府之証」バイカラーのスイートコーン「ミルフィーユ」

まつのベジフルサポーターレポート

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。

「フルーツ王国」山梨県は、果物栽培に適した気象条件を活かし、ナスやトマト、キュウリなどの果菜類を中心に多くの野菜も栽培されています。その中でもスイートコーンは、山梨県の野菜生産量第1位(平成29年山梨県農業及び水産業生産額実績)。出荷時期は、甲府市・笛吹市・中央市・市川三郷町などの盆地で行われるハウス栽培の早出しから、八ヶ岳南麓や富士北麓地域などの冷涼な気候を生かした北杜市・忍野村などの夏出しまで、長期にわたっています。
茹でミルフィーユ
山梨県でのとうもろこし栽培は戦前から行われていました。土地の大半が山地であるため、富士山の溶岩流や火山灰土の地質で稲作には向かず、大麦・小麦・とうもろこしなどの雑穀類の栽培が主流。特にとうもろこしは、フリントコーン(硬粒種)に分類される「甲州とうもろこし」が多く栽培され、収穫後軒下などに吊るして乾燥させた後、粉にして団子などで食べられていました。現在も忍野村などで栽培されているものの、ほとんどがスイートコーン(甘味種)に置き換わっています。

品種も「ゴールドラッシュ」や「きみひめ」などの黄粒種、「ピュアホワイト」などの白粒種、「甘々娘」や「ミルフィーユ」などのバイカラー種など、様々なスイートコーンが栽培されていますが、今回は「甲府の良きモノ」として甲府ブランド認定制度「甲府之証」農林産物部門の特産第4号として認定を受けている「ミルフィーユ」についてご紹介します。
ミルフィーユ
ミルフィーユは、同じく甲府市で育てられている黄粒種「きみひめ」やバイカラー種「しあわせコーン」と共に、平成28年6月7日に甲府之証に認定されました。中早生のバイカラー種で、黄色と白色のコントラストが美しく、パイ層を何層も重ねたフランス菓子のミルフィーユをイメージさせることから、その名が付きました。3品種とも糖度が18~19度と高く、甘みが強い品種ばかりですが、ミルフィーユはコクのある甘さとフルーティな香りをもち、1房が比較的大きいのが特徴です。
大きなミルフィーユ
山梨県で栽培されているスイートコーンの主な作型は4種類。ビニールマルチを使った露地栽培の他、プラスチックパイプの両端を土壌に挿入してかまぼこ型の骨組みを作り、ポリエチレンや塩化ビニールのフィルムで被覆したトンネルの中で栽培する一重トンネル栽培、さらにそのトンネルの外側に大型のトンネルをかけた二重トンネル栽培、そしてパイプハウスを利用したハウス栽培などがあります。この写真は一重トンネル栽培の様子。ミルフィーユも4種類の作型で栽培されています。
一重トンネル栽培
3月下旬、露地栽培の播種の様子を見学しました。ミルフィーユは播種から収穫までが約85日と言われていますが、気温や気候により変動します。

隣の一重トンネル栽培の圃場には、2月下旬に種をまいたミルフィーユが育っていました。
一重トンネル栽培
露地の播種から約1週間。無事発芽を確認!欠株を防ぐため、1つの穴に2粒撒いています。
播種後約1週間
播種から1か月ほど経った様子がこちら。一重トンネルの1か月後と比べて背丈が少し大きいですね。
播種から約1か月
3月は霜が降りることもあり、時には雪が降ることも。また、急激な温度上昇があれば、ビニールを開けて換気をします。トンネル栽培はきめ細かな管理が必要となるため栽培が難しいのですが、少しでも早く生活者に届けるため、手間は惜しみません。

本葉が3~4枚になったところで、生育の良い株を残して1本にします。この方法を1本仕立てと言います。しかしこの段階で1本に間引いても、成長するにつれ株元からわき芽が出てきてしまいますが、このわき芽の扱いは生産者によって様々。最初からかき取ってしまう人もいれば、あえて残してわき芽の葉も光合成させて養分を増やすことで、雌穂を肥大させるやり方をとる人もいるそう。中央の太い茎以外がわき芽です。
わき芽
通常1本の株に雌穂が2~3個付きますが、甘くて大きな実を収穫するために、最上段についた一番果を除いた二番果以降は摘果します。
摘果
摘果した実はヤングコーンまたはベビーコーンと呼ばれ、直売所やスーパーなどに並ぶことも。ひげが出始めたタイミングで摘果できると、10センチ程度の柔らかい実が穫れますが…
採れたてヤングコーン
多くの生産者は忙しくてベストなタイミングで摘果はできず、様々な大きさのヤングコーンに出会うことも(笑)。
ヤングコーン
そして6月上旬、一重トンネル栽培の収穫期を迎えました。スイートコーンの収穫といえば早朝!これは高温になると実の糖分がエネルギーに変わって甘味が落ちてしまうため。気温の下がった夜に糖分を蓄え、気温が上がる前の早朝に収穫するのがベストなので、最盛期は早朝4時前から収穫作業を行います。
収穫最盛期
あっという間にかごがいっぱいに。
収穫最盛期
軽トラからこぼれそう。
軽トラからこぼれそう
収穫作業を終えたら出荷の準備。切り口を整え、虫などが侵入していないか1つ1つ確認しながら丁寧に拭きます。
品質チェック
JA甲府市が定める出荷規格で2Lサイズに選別される380~550グラムの実を、12本ずつ箱詰めしていきます。
2L12本
「同一品種で品質形状良好で、病害虫なく粒着よく先端のしなびのない」2LサイズA等級のミルフィーユ130箱が全国の市場に向けて旅立っていきました。
箱詰め完了
ちなみに、山梨県では「JA甲府市直売所穫れたてLand山城店」で購入できます。開店直後はこんなにたくさん並びますが…
盛り盛りミルフィーユ
数時間で完売してしまう盛況ぶり。

スイートコーンは鮮度が命です。収穫した瞬間から糖度が落ちていくと言われるので、購入したらすぐに蒸すか茹でましょう。また、美味しいスイートコーンを見分けるポイントはヒゲ。ヒゲの数は実の数と同じです。ヒゲが多い方が実が詰まった証拠。そして先が黒いものの方が熟しています。皮が緑色でヒゲにつやがあるものを選びましょう。

今年の夏は甲府盆地で育った「ミルフィーユ」をぜひ手に取ってみてくださいね。
ミルフィーユ
山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。

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