まつのベジタブルガーデン

青森県青森りんごから生まれた新たなビジネスへの挑戦!

まつのベジフルサポーターレポート

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑(かけはた)睦子です。

閉ざされていた冬の八甲田山。県南と津軽を結ぶ雪の回廊も開通し、ここ北国青森にも例年より少し早い春がやってきました。今回は、まもなく桜が開花し、見頃を迎える弘前さくらまつり(4月21日~5月6日)にあわせて準備を進めている弘前市の「もりやま園」の新しい取り組みを紹介します。

こちらはりんごの生産過程で廃棄されるはずのものから生まれたもの。「摘果果(テキカカ)シードル」と「きくらげ」です。

弘前市で9ヘクタールもの広大なりんご園を営む、もりやま園株式会社代表取締役の森山聡彦さん。
テキカカシードル工場のある本社訪問し、お話を聞きました。

明治時代から140年以上続くりんご農家を継ぎ、2015年に農業生産法人を設立しました。ひょう害や台風といった自然災害などの経営悪化の苦しみも体験し、「やればやるほど赤字!」という年もあったそう。でも、そのピンチから新たなビジネスへの挑戦が始まりました。

りんごの生産は融雪・雪下ろしから始まり、剪定、改新植、受粉作業に摘果。落葉除去、防虫・鳥害対策。袋掛けや葉摘みに玉回し…と、収穫までとても手間がかかります。その中でも剪定枝や落葉・摘果の回収と廃棄に要する時間は、なんと年間の作業時間の75%を占めていると知り、驚きました。そこで「捨てるから作る」への転換で効率化を図ったのです。それが、もりやま園の「りんごリ・サイクル」。

その取り組みの一つが、世界初の「摘果果(テキカカ)シードル」です。

シードルはりんごを原料としたヨーロッパ生まれの発泡性果実酒で、繊細な泡立ちとスッキリとした飲み口が特徴です。青森県でもここ数年、付加価値の高い加工品として地シードル生産に取り組むりんご農家が増えてきました。本来シードルは、甘味・苦味・酸味・辛味・渋味をもつ様々な種類のりんごをブレンドして作られますが、もりやま園では今まで摘果作業(幼果の間引き)で捨てていた青く小さな未成熟果実「摘果果」を加工して作っているのです。

ところが、この摘果りんごを使用するには、今まで青森県りんご業界が推進するスタンダードな病害虫防除マニュアルでは農薬使用基準を守ることができませんでした。その基準をクリアすることもふまえ、9ヘクタールの圃場における全ての作業を把握するための独自のシステム開発にのりだしました。

1本1本の作業工程や情報記録をスマートフォンのQRコードで簡単に読みとり、そのデータを基に生産性の向上と作業の効率化を図り、摘果りんごの活用をも可能にしたのです。

その取り組みはHIROSAKIビジネスアイデアコンテスト(2015年弘前商工会議所青年部主催)で準グランプリを獲得、産地パワーアップ事業(農林水産省)の認定を受け、昨年の秋にシードル工場を設立しました。テキカカシードルは青森県産業技術センター弘前地域研究所との開発により生まれました。
もりやま園独自の「摘果果シードル」は洗浄・搾汁・冷凍し、解凍後3週間の発酵仕上げで出荷します。成熟果で作ったシードルに比べると甘さが控え目でマイルド、しかもシャープな味わいです。アルコール度数は5%と低く、豊かな泡立ちが特徴で料理を選びません。「ビール感覚で飲んでいただきたい。苦いビールが苦手な方におすすめですよ!」と森山さん。

小さな摘果りんごには成熟したりんごの約10倍もの抗酸化作用成分のポリフェノールが含まれているといわれています。今年2月に発売されたばかりの新商品「摘果果(テキカカ)シードル」、弘前さくらまつりでいよいよお披露目です!

ぜひ会場に足を運んで、味わってみてください。りんごジュースや干しりんごも販売するそうです。お楽しみに!

さて、もう一つの取り組みが「きくらげ」栽培。りんごの剪定作業で出る木の枝は36トン、りんご搾汁後の搾りかすは15トン。その剪定枝のチップとアップルポマース(摘果果搾汁かす)を菌床に利用しています。

国内で流通しているきくらげは約90%が中国産ですが、自社農園で生産したものを材料に使うことで、安全・安心な国産のきくらげの提供が可能になりました。


 商品名は「りんごの木の子」。

きくらげは鉄分やビタミンD、食物繊維を含み、この「りんごの木の子」はりんごポリフェノールが含まれているのも特徴。万能きのこと呼ばれ、他の食材の味の邪魔をすることがなく、煮ても炒めても、和えても揚げても、焼いても良し。ぷりぷり&こりこりした食感がいいですね。

乾燥3日目のキクラゲを使い、「セージときくらげのフリット」を作りました。ハーブの一種「セージ」はデザイナーズフーズピラミットで3群に属しており、その成分には抗酸化力があり、がん予防が期待されています。

卵白を泡立てて小麦粉と少々の塩、摘果果シードルを加えた衣を付け、油でさっと揚げました。チーズと一緒に味わいましょう。きのこに含まれるビタミンDはカルシウムの吸収力アップに欠かせません。この意外な組み合わせが美味しいのはキクラゲならでは。シードルのお供にぴったりです!

また、5月のりんご園に顔を出すという「モリーユ(トガリアミガサ茸)」についても、本格的なりんご作業前の収入につなげられないかと研究が始まっています。年間を通して安定した収入をあげることで、後継者不足や青森のりんご産業の存続と活性化が期待されます。森山さんの新しいビジネスへの挑戦はまだ始まったばかりです。

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑睦子でした。

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