松野貞文の全国視察レポート

長崎県初夏を告げる爽やかな甘み「長崎びわ」

今回、松野貞文社長は長崎県へ。東彼杵(ひがしそのぎ)郡東彼杵町のびわ農家様を訪問しました。

同行したのは、長崎の隣県、佐賀県のまつのベジフルサポーター・食育マイスター・野菜ソムリエの前田成慧さん。レポートをお届けいたします。

長崎県は収穫量・出荷量共に、日本一のびわの産地です(平成28年農林水産統計)。その中でも、長崎県のほぼ中央に位置する東彼杵町は、大村湾に面し、自然豊かで年間を通して温暖な気候に恵まれているため、びわの栽培が盛んです。びわ栽培には日照が特に必要で、温かい気候に加え、燦々とふりそそぐ日光が、爽やかな甘さのある初夏の味覚「長崎びわ」を育みます。
長崎県は江戸時代後期からびわ栽培の歴史があり、中国から伝わった品種をもとにして、本格的な栽培が始まりました。長崎県では日本一のびわ生産地を目指して、ブランドの維持・拡大に力を注いできました。長崎びわは露地栽培が主ですが、平成元年より市場性の高いハウスびわを積極的に導入、栽培面積も拡がり、高品質な果実が市場で高い評価を得ています。


さて、今回訪問したのは、長崎びわの生産者の明時幸夫さん(68歳)、和子さん(65歳)ご夫妻。平成元年に農地3割の減反(田んぼをやめて他の作物をつくる)のため、「長崎早生」という品種を導入し、現在は9棟(1050坪程)のハウスで、二代にわたってびわを栽培されています。
びわの木は植えてから3年は木を育てるために果実は出荷できませんが、根気よく大きな木に育てあげた明時さんご夫妻。ハウスに入った瞬間、艶のある大きくて硬く立派なびわの葉と生い茂る木に圧倒されました。「まるでジャングルのようだ!」と松野社長も驚きを隠せません。

実は、びわの木を初めて見たという松野社長。ジャングルのように生い茂るびわの間をどんどん奥の方へ。「はじめは小さい木だったんだろうけど‥‥。とても大きな立派な木に育ったんだな」と感嘆していました。

「びわは、日照が朝から晩まで必要で、曇天つづきだと花の開きが悪くなり、新芽も出ない。水も良く吸います。収穫の時期は水をやりすぎると果実から蜜でてくるのでダメなんです。水加減がとても難しい果物です」と、和子さん。

「減反した後、なぜびわ栽培を始めたのか?」という松野社長の質問に、「日本一の果物を作りたいと思った!」と、幸夫さんは力強く答えてくれました

びわは他の果樹の中でも珍しく、冬の11~2月の間に花が咲き、デリケートな果実であるため、傷がつかないように2~3月には一つひとつ袋をかけます。露地栽培の収穫は5~6月です。ハウス栽培では、全てにおいてひと足早く、910月に花は満開となり、一枝に6個ほど残して花摘みを行います。

11月頃果実が実ると、34個を残して摘果します。121月にV字に玉太りしたびわを見極め摘果し、さらに袋をかけて、12月上旬からハウス内を温めて2~4月に収穫・出荷されます。ハウス見学時はすでにハウスびわの収穫は終了していましたが、袋がけしていない立派なびわに出会えました。

ところで、露地栽培とハウス栽培の違いはあるのでしょうか?それは種の比率に現れるのだそう。露地栽培の果実の特徴は果皮や果肉が硬く、種の部分が果肉に対して半分を占めますが、ハウス栽培のびわは果皮や果肉が柔らかく、種が3割で果肉部分が7割と、可食部分が増えることを教えて頂きました。可食部分が7割くらいのバナナと同様になりますね。

袋掛けから収穫まで全て手作業。なんとも手間がかかります。出荷における品質の基準は、その形や色、艶などで総合的に判断されます。収穫時の形や色の見極めについても、まさに生産者の経験こそが物を言うのです。「素人には分からない。難しそうだ」と松野社長。びわ収穫の見極めの難しさを実感されたようです。

さて、びわを食べる時は、びわの軸の方を持ち、お尻から剥くと皮と実の離れがよく食べやすいです。保存は常温で、食べる2~3時間前に冷やすと美味しくいただけるそう。

早生品種の代表格「長崎早生」は酸味が少なく、玉が大きくてジューシー。果肉も柔らかく、上品な甘さが特徴です。寒さに弱いことからハウスで栽培される品種で、約40gと大きく、卵のような形で、糖度は12~15度と風味豊かな果実になります。

長崎びわを実際に味わった松野社長は、「上品な甘みで果肉が柔らかい。美味しい!」と絶賛。

風味と味わいの良い「長崎びわ」は、長崎で採れる品種の総称です。今回、東彼杵町で視察した「長崎早生」の他に、酸味が少なくて食味の良い「茂木」、大玉で食べごたえのある「長崎甘香(品種名は福原早生)」、糖度が高くて大きい果実の「涼風」、黄白色の果皮と白い果肉が珍しい晩生種「白茂木」、糖酸のバランスのとれた美しい橙黄色の「陽玉」、新品種「なつたより」など、様々な品種があります。ハウスから露地物まで、6月中旬まで品種リレーが楽しめます。

ちなみに、びわの葉はお茶やお酒にも利用できますし、びわ風呂やびわ化粧水、民間療法の温湿布・冷湿布としても活用されています。びわの葉エキスとしても商品化され、万能常備薬として昔から重宝されてきました。鑑真和尚が中国から持ち帰ったびわの木を寺の境内に植え、僧侶たちがけが人や病人の手当てに使ったというびわの葉療法の歴史もあります。

(写真は露地、軒先のびわ)

初夏の訪れを告げるみずみずしく上品で爽やかな甘さの長崎びわ、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

 

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