ベジフルサポータージャーナル

高知県オランダ式「次世代型ハウス」で作るトマトとは?

まつのベジフルサポーターレポート

こんにちは!高知県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ上級プロ、食育マイスターの斉藤香織です。

高知県はナス、ミョウガ、ニラ、ピーマンをはじめとした野菜の園芸栽培が盛んですが、森林率が84%で全国第1位だということはあまり知られていません。耕地面積が少ないため、昭和30年代頃から、温暖な気候を利用したハウスなどでの園芸栽培が普及してきました。そして近年、その園芸栽培において新たな取り組みが始まっています!

そのお手本はオランダ式の農業。オランダではハウス内の温度、湿度、CO2濃度などの環境制御を徹底し、収量の増加を図っています。平成21年に高知県とオランダのウェストラント市は「友好園芸農業協定」を結び、交流を進めてきました。今回はそのオランダの技術を活かした次世代型ハウスで、最先端のトマト栽培をされている「株式会社ベストグロウ」さんをご紹介します。

昨年3月に四万十町にできた「次世代施設園芸団地」。その一角にベストグロウの建物があります。入って驚くのは食品工場のような設備。3台のエアーシャワーがあり、ハウス内に入る際、病害虫を持ち込まないような配慮がされています。
 
そしてオランダの労務、栽培管理システム「PRIVA」も導入されています。誰がどの苗をどれだけ手入れし、収穫したか、作業の様子がデータでわかるようになっているんですね。

いよいよハウスの中に入ります。ハウスに入ってまず驚くのは軒の高さ。普通のハウスの約3倍(6m)の高さです。そしてムっとするような暑さはなく、空気の流れを感じるような箇所もあります。明るく広々とした空間にBGMがかかっていて、とても気持ちが良いです。人が快適だということは、トマトにとっても快適ということ。軒を高くすることで光合成能力を促し、夏の急激な温度上昇を避けることができます。

下のダクトには炭酸ガスが通っています。これはハウスを温めるためのLPGボイラーから出る排ガスですが、これはクリーンなのでハウスに入れても大丈夫!また県内では唯一、液化炭酸ガスも利用していて、このダクトでハウス内のCO2濃度を制御し、日射条件に合わせ、よりトマトの生育に必要な環境を作り出しています。

床のパイプには温水が通っていて、温かい空気がゆっくり上がる仕組みになっています。単に温めるだけでなく、梅雨時などは、天窓を少し開けて湿気を逃がすこともできます。水滴が病気へと繋がるので、湿度管理は大切です。

真っ赤でツヤツヤなトマトたち!本当に快適にのびのび育っているように見えます。

ロックウール培地で養液栽培をしていますが、液肥は垂れ流しがないよう、集めてUV殺菌した後、リサイクルされます。清潔で環境にも配慮した栽培です。

苗入れは7月、収穫は9月から始まり、翌年のの7月頭まで。年1回の長期栽培をしています。木が伸びると 木を止めてあるクリップを外して、順に下ろしていきます。また高いところはバッテリー昇降台を使用して作業。床に配してある温水パイプが、昇降台のレールも兼ねているのです。とても作業しやすそうですね。

「トマトにほどよいストレスしか与えないように環境をつくっていく」と語るのは、今回案内してくださった株式会社ベストグロウの代表取締役 東宣雄さん。平成24年に三原村の「有限会社四万十みはら菜園」の子会社として設立されました。これまでは主に、同園のトマトを使ったトマトジュース、ドレッシング、マヨネーズなどの加工品を製造、販売していましたが、昨年四万十町にできたこの「次世代施設園芸団地」で栽培に参入。「経営と栽培の切り離しが必要」という東さん。独自の優れた感覚と徹底した栽培管理で素晴らしい成果を出されています。

親会社の四万十みはら菜園は、高知県西部の三原村にあります。カゴメ株式会社の契約農園で、平成15年から品種提供と技術指導を受け、高リコピントマトなどの栽培をしてきました。全国にある19社の契約農園の中でも収穫高はナンバーワン!その四万十みはら菜園の小八木喜尊社長の想いは、「日本一のトマトを作り、従来の農業の形を変えたい」。広大な2.7haのハウスで、最先端設備を備えているのはもちろん、土日完全定休、利益の公平分配(パートさんにも賞与を出す)など、従業員の働く環境を整え、魅力ある職場作りをしています。そこに高知県が注目し、「次世代施設園芸団地」参入のオファーをしました。現在この四万十町のハウスは2棟で、1.4haをベストグロウ、1.5haを四万十みはら菜園として栽培しています。2社合わせて2.9haの敷地面積に、約10万本のトマトの苗!ここは四国最大の規模を誇るハウスなのです。

入り口で見かけた「PRIVA」。この一列をいつ誰がどのような処置をしたのかが、データでわかります。うっかりミスもこれで防ぐことができます。今までの日本の農業は、極端に言えば温度計しかない状況でした。しかしオランダでは10年ほど前から、データでの管理が当たり前。このハウスではデータ任せではなく人のチェックも大切にしながら、ハウス環境と生育状況をしっかり把握しています。

ハウスを出て、出荷の様子を見に行きました。収穫されたトマトがどんどん流れています。カゴメの「GABAリッチ」一袋200gの重量を設定すると、それに合わせて自動で選果され、流れているベルトから手元にトマトが落ちて来る仕組み。完全にシステム化されています。 

こちらはバイオマスボイラー。地域の木材から製造したおがくずを燃料に、夜間ハウス内を温めています。環境にも配慮した地域循環型の設備です。高知県はこの「次世代施設園芸団地」で、単にトマトを生産するだけでなく、近くに育苗施設やバイオマス供給施設、人材育成研修施設の「農業育成担い手センター」などを集積した「地域産業クライスター」作りを目指しています。

最後に「みはらのトマトジュース」をいただきながら、高知県農業振興部産地流通支援課、次世代園芸推進室長の岡林俊宏さんからお話を伺いました。

「高知県の園芸農家の平均収量は、国内ではトップクラスですが、オランダと比べるとその半分に満たないものもあります。そこでオランダ式の環境制御技術を取り入れた次世代ハウスで効果を実験したところ、ナス、シシトウ、ピーマンの収量が2、3割ほど伸びています。平地の少ない高知県でどのように『稼げる農業』をしていくのか。そして地域に雇用を生み出していけるのか。この四万十町の次世代施設園芸団地をモデルに、今年度中には県内6カ所に新たな次世代型ハウスが完成予定です。県では、『地域で稼げる農業』の実現を目指して、この次世代型ハウスの整備や、既存のハウスへの環境制御技術導入を積極的に支援していきます」

「若者が誇りと志を持って働くことのできる高知県」を築くためにも、その先頭を走り、これからのモデルとなるベストグロウと四万十みはら菜園への期待は、ますます大きくなるでしょう。今後も次世代型トマト栽培に注目していきたいと思います。

高知県のまつののベジフルサポーター、野菜ソムリエ上級プロ、食育マイスターの斉藤香織でした。

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