まつのベジタブルガーデン

福井県懐かしくも温かい地域に伝わる伝承ご飯料理

まつのベジフルサポーターレポート

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代です。

緑のまぶしい季節になり、様々な植物がぐんぐん成長し始めています。兼業農家の我が家でもようやく田植えが終わりました。機械化が進んでも家族総出で行われる大変な作業で、無事に終わるとほっとします。

さて、私の住む地域では、田植えが終わった皐月あげの頃に食べる伝承料理に「朴葉めし」があります。朴葉というと、乾燥した朴葉に味噌や薬味を載せて焼く飛騨高山地方の朴葉味噌が有名です。
朴は、モクレン科の落葉高木、5メートル以上の高木になり、5月の中旬頃には木蓮に似た大きな白い花が咲きます。

放射線状に葉が生えます。この柔らかい朴葉を二枚十字に重ね、甘いきなことご飯を包みます。葉の裏側の方が香りが強いことから、裏面にきな粉やご飯を載せます。
麻ひもなどで包み、重しをしたり炊飯器で保温して朴葉の香りをご飯に移します。

甘いきなこご飯と朴葉の香りが郷愁を誘う味です。

私にとっては、子供の頃から食べていた朴葉めしですが、福井の中でも越前市や鯖江市などの一部の地域でしか食べられていないそうです。朴葉には芳香と殺菌作用があり、気温が上がってくるこの季節に保存性を高めると共に、栄養価の高いきな粉を稲の花の花粉に見立て、豊作を祈る食べ物としたともいわれています。

一方で、福井県の県庁所在地、福井市では、油桐の葉で五目寿司を包む「葉ずし」が食べられています。
油桐はトウダイグサ科の落葉高木、種子から桐油を取り、塗料として使われて言います。その葉は、表面に適度な油気がありご飯がくっつきにくく、保存性があると共に独特の香りがすることから「すしの葉っぱ」とも呼ばれ、この地域では家々で栽培もされています。
福井市内では金時豆入りの五目寿司、永平寺町や坂井市の方では九頭竜川を登るサクラマスを寿司飯と包みます。五目ご飯を包む葉寿司を提供している福井市殿下地区の「かじかの里山殿下」へ行ってきました。葉ずしは、水、土、日しか作られていませんが、夏ごろに油桐の葉を冷凍し一年中使えるようにしています。

ひじき、高野豆腐、乾しいたけ、にんじん、ごま、金時豆などが入った葉ずしが大変人気です。


その他に、こちらでは、毎日30種類以上の料理がバイキングで食べられます。その料理は、地域のお母さんたちが旬の食材を使って作る季節の郷土料理。よもぎや明日葉、ヤーコンの天ぷら、独活の酢の物、鰊の昆布巻き、麩の辛し和え、北陸ならではのとろろ昆布のおにぎりなど・・・・。どの料理も優しくて、ほっこりとし、ついついたくさん食べてしまいます。

さて、もう一つご紹介したい地域に伝わるご飯料理があります。北国街道の宿場町、今庄宿に伝わる「茶飯」。炒った大豆と大豆入り番茶で作るおこわです。

福井では、大豆を使った食品が数多く食べられています。
その中でも県民が普段よく飲んでいる「豆入り番茶」があります。玄米茶の煎り大豆版といったところですが、煎り豆の香ばしさがお茶を美味しくしてくれます。
フライパンでじっくりと炒った大豆(左)の外殻を丁寧に取ったもの(右)を豆入り番茶ともち米とうるち米で炊かれます。私も作ってみましたが、大豆の外殻を取り除く作業が結構大変で、見た目はシンプルなのにとても手間のかかる料理です。

そのルーツは、奈良の東大寺や興福寺の僧房で食べられていた茶粥が旅人によって伝えられたものと言われています(諸説あり)。良質なたんぱく源の大豆と腹持ちの良いもち米を食べることで、旅人の栄養源として作られていた今庄宿の伝承料理の一つです。

今回は、福井で昔から食べられている伝承料理のご飯ものをほんの一部ご紹介しました。日本中には様々な伝承料理があることでしょう。どこか懐かしくて、ほっとする味、これからも変わることなく食べ伝えていきたいとおもいます。

福井県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代でした。

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