まつのベジタブルガーデン

青森県北国ならではの知恵が生んだ保存食「寒干し大根」と「凍み豆腐」

まつのベジフルサポーターレポート

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑(かけはた)睦子です。

青森県の南東部、岩手県との境に位置する三戸町。今回は国道4号からさらに西に車で15分ほどの貝守(かいもり)地区へ行ってきました。

南部地方ならではの厳しい気候風土のもとで食べ継がれてきた貴重な保存食を作る農業女性起業グループ「貝守(かいもり)やまゆり会」をご紹介します。

生産拠点のウッド・ロフト貝守を訪ねました。

早朝からの手仕事を終えたばかりの代表、中沢幸子さんと和田良子さんに出来たての酒まんじゅうとよもぎ餅、よもぎ茶でもてなしていただきました。

まずは伝統の保存食「寒干し大根」と「凍み豆腐」の生産現場へ。

南部地方は太平洋側を中心とした偏東風(ヤマセ)の影響で、夏は冷涼ですが、冬は雪で閉ざされるため、食べつないでいくための知恵から生まれた保存食が受け継がれ、現存しています。こちらが「寒干し大根」です。

私が子供の頃には各家庭の軒下によく吊るされていたものですが、この頃ではめっきり見かけなくなりました。貝守やまゆり会では寒さが厳しくなる1月になると作業開始。大根の皮を剝き切って硬めに茹で、針に編んだ藁をとおし、一つづつ大根がずり落ちないように結びつなげていきます。

結ばれた大根は凍てつく湧水の中に1週間ほど浸してから、2ヵ月間寒風にさらしますが、大根が重いため、男性の力が必須の作業です。その後仕上げ乾燥して、藁付の土産用はそのまま、他は藁を外して袋詰めします。

「こんなに白く綺麗なのは1週間湧水に浸すから」と中沢さん。この作業を省くと、薄茶色く見た目も味も劣るそうです。この寒干し大根は煮ものや汁ものに入れて食べることが多く、馬肉の味噌煮込みや豚汁には欠かせない食材です。

また、太めに切った「切干だいこん」もとても人気があります。そのまま食べてみると、甘みはもちろんですが食感がいいので、ヨーグルトでもどしそのまま我が家の朝の定番メニューになりました。切干だいこんはカルシウム、カリウム、ビタミンB、食物繊維が豊富です。水でもどして漬物や煮物に大活躍!

「凍み豆腐(しみどうふ)」は、40アールほど作付している自家栽培の大豆で作った豆乳ににがりを加え、ベストな硬さの豆腐作りから始めます。一定のサイズに切り揃えた豆腐は、本来なら野外で一晩凍らせるのですが、温暖化により天候にむらがあるため、現在は衛生面をも考慮し便利な急速冷凍をしています。それは「凍み豆腐」として冷凍販売されています。

さらに冷凍後の豆腐を一枚づつ編みあげて吊るし、2ヵ月間寒風にさらし乾燥することで、黄金色の風味豊かな凍み豆腐(自然乾燥)ができあがります。

最近は変色を防ぐため、藁ではなくビニールひもを使うようになりました。寒さがなければ形が変形したり外れてしまうため、管理がとても難しいそう。凍み豆腐はカルシウム、マグネシュウム、鉄分、ミネラルを含んだ栄養豊富な冬の貴重なたんぱく源。水で数分戻しかるく絞ってから使います。味噌汁や煮物、天ぷらにどうぞ。また乾いたまますりおろしてハンバーグのタネに加えてみてください。

26年ほど前に結成された「貝守やまゆり会」は、現在、子育てが一段落した30代後半から74歳までの50人の女性が活動しています。早朝から交代で作られる自家製餡を包んだよもぎ餅は、春に摘み採ったよもぎの若葉を冷凍保存することで通年食べられるようになり、綺麗な緑色と香りが自慢です。また餃子の形に似たカマス餅(きんか餅ともいう)は、くるみと黒ゴマ・黒砂糖が麦餅で包まれている三戸の名産です。

これらの品々は、三戸町出身の絵本作家・馬場のぼるさんのキャラクターが迎える「道の駅さんのへSAN・SUN産直ひろば」で販売されています。


 中では、同会の会員が郷土食を作り提供しています。この日の当番の中沢さんは、ほんのり甘いじゅね(エゴマ)味噌をつけた麦餅を炭火で焼きあげ実演販売していました。

じゅねは必須脂肪酸のα-リノレイン酸を多く含み、エゴマオイルとしても人気がありますね。シソ科の一年草で生命力が強く、縄文遺跡からも種実や根茎が見つかっています。収穫から選別までとても手がかかる作物ですが、その手間暇をも惜しまず郷土食として県南地方では古くから食べられてきました。

こんな面白いポスターも貼られていましたよ。

今回、私は「ひっつみ定食」をご馳走になりました。漬物やヨモギ茶のサービスや特産のりんごのデザートまでついています。貝守やまゆり会の方々の笑顔は、昼時に訪れるたくさんの人たちを温かくもてなしています。

子供心に白い割烹着は憧れでした。温かい家庭の食卓が今でも思い出されます。時代とともに変化しながらも受け継がれてきた北国の食文化、守り伝え続けてほしいですね。

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑睦子でした。

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