まつのベジタブルガーデン

福井県450年の伝統 燻して作られる「今庄つるし柿」

伝統野菜・食文化

こんにちは。福井県のまつのベジフルサポ―ター、野菜ソムリエプロ、だしソムリエ協会認定講師の水嶋昭代です。

早いもので、今年もあとひと月。福井の山々は、うっすらと雪が積もり始めています。寒いけれど、越前ガニや冬にだけ食べられる水ようかんなど美味しいものがたくさんあります。

今回は、晩秋に作られる「今庄つるし柿」をご紹介します。今庄つるし柿は、450年の歴史があり、全国でも珍しい燻して作られる干し柿です。
北国街道の宿場があった南越前町今庄で作られている今庄つるし柿は、「ひとつ食えば一里、三つ食えば三里歩ける」と言って昔から旅人によく知られてきました。
つるし柿に使われる柿は、「長良柿(ながらかき)」というこの土地特有の渋柿です。収穫した柿は、つるしやすいようにT字に軸を整えます。この部分は鐘を突く道具に例えて「撞木(しゅもく)」、地元では「かんざし」「ほぞ」と呼びます。
へたを取り除き、かんざしの周りの皮を取り除く【へたまわし】をし、縦に皮をむきます。


最近では、多くの柿をむくために、へたまわしと皮むきは、機械も使われています。機械の場合は、横向きに皮がむかれます。

柿をつるします。

今庄では、「ミチシバ」で柿をつるします。ミチシバはイネ科の植物で、道端に生えている草ですが、こちらではつるし柿のために栽培されています。
独特な道具を使って縄をないます。しかし、この縄をなうことが出来る人が年々少なくなっています。
最近では、つるした状態で出荷されるもの以外は、プラスチックの器具を使ってつるされています。
皮をむき、つるされた柿は、天気が良ければ、二日ほど外で干します。
ケヤキやナラの木で5日間燻します。今庄は、福井の中でも豪雪地帯、秋から冬にかけての日照時間が短く、天日で干すことは難しいのです。燻すことで、柿の水分を抜いていくことが出来ます。燻す乾燥炉では、火入れ後は夜中でも3時間ごとに火の番をし乾燥具合をみます。
柿を燻して3日目には【種割り】を行います。表面から揉んで柿の身と種を外していくのです。
燻し終わると、熱湯に浸け、表面の煤を洗います。更に、天日で乾燥させ、形を整えて完成です。

少しスモーキーな香りがする今庄つるし柿、昔から各家庭で作られ、囲炉裏で燻していました。残念ながら、年々、作り手が減ってきています。
南越前町地域おこし協力隊員の中谷翔さんが、今庄宿の「旧玉村邸活用プロジェクト」の一環で、11月中旬から12月初旬にかけて、つるし柿を手伝ってくださる人を募集しています。県内外からこのイベントに関心のある人たちが訪れ、つるし柿作りを体験、熟練した地元の人と共に担い手として携わっています。
このプロジェクトに場所を提供し、今回つるし柿作りを見せて頂いたのは、株式会社杉休の三浦政勝さんです。年末年始にしか出回らなかった今庄つるし柿を将来的には通年販売できるようにしたいそうです。

つるし柿の栄養は、生の柿よりも、ビタミンCは減少しますが、ビタミンA、食物繊維、カロテンが増え、高血圧や脳卒中などを予防し、消化を助けてくれるので、胃腸を整え、二日酔いにも効果があると言われています。

今庄でたまたま外に柿を干しておられるお宅を見かけ、お声掛けしたところ、昨年作られて冷凍してあった「柚子まき」を食べさせてくださいました。

つるし柿を広げて、柚子の皮を巻いたものです。切り口も美しく、柚子が優しく香るとてもおいしい柚子まき、自宅用に作られているそうで、残念ながら売られてはいないそうですが、つるし柿と共に伝えていって欲しいです。

細かく切ったつるし柿とくるみとクリームチーズを混ぜ、生の柿とクラッカーにのせました。少しスモーキーなつるし柿とクリームチーズがぴったりです。クリスマスやお正月に伝統的な製法で作られている今庄つるし柿、年末年始にぜひ食べてみてくださいね。

福井県のまつのベジフルサポーター、水嶋昭代でした。

 

 

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