まつのベジタブルガーデン

沖縄県カスタードのような極上の甘味!冬のトロピカルフルーツ「アテモヤ」

野菜・果物品目レポート

沖縄県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの齋藤珠美です。

1年で最も寒い2月の沖縄。それでも10度を下回る事は滅多にありませんが、冷たい北風が吹くと体感温度もぐっと下がります。今回はそんな冬の時季に楽しめる南国のトロピカルフルーツ「アテモヤ」をご紹介します。沖縄でも生産量が少なく市場にもなかなか出回らないため、高級フルーツとして取り扱われています。
アテモヤの木
ドリアン、マンゴスチンと並んで世界三大美果のひとつチェリモヤと、バンレイシ(シャカトウ)を掛け合わせ、フロリダで品種改良された亜熱帯のフルーツ「アテモヤ」。その名前は、中南米の言葉でバンレイシを意味する「アテ」と、チェリモヤの「モヤ」から名付けられたと言われています。チェリモヤは「森のアイスクリーム」、バンレイシは「シュガーアップル」という別名もあり、その甘さを連想させる味わいに興味がわきます。
アテモヤ
今回、糸満市与座の「かんな農園」を訪問しました。システムエンジニア、公務員を経て2014年に農家に転身した漢那宗貴さんは、父親と叔父の3人でアテモヤを栽培しています。農園に入ると、ひと口大にカットしたアテモヤを差し出し、「まず、食べてみて!」と笑顔の漢那さん。
かんな農園
口に含むとクリーミーな果汁がいっぱいに広がり、かみしめるたびに甘味がじゅわーっと広がります。見た目からは想像がつかないこの甘味に衝撃を受けました!アイスクリームというより、洋ナシをより甘くしたカスタードのような滑らかで濃厚な味わいです。

漢那さんが農業に転身すると決めた頃、友人から教えてもらったというアテモヤ。「こんなに期待を裏切られた果物は初めて」と、視覚と味覚のギャップに驚いたそうです。甘くて濃厚な美味しい果物をたくさんの人たちに食べてもらいたい!という思いから、台風で施設が損壊して管理されていないアテモヤ畑を一部借りてスタートしました。それから一気にアテモヤ栽培にのめり込み、「甘党の僕にはこの甘さがピッタリなんです!」と満面の笑顔で語ります。
アテモヤの木
気温が25度以上の日が2~3日続くと木に実ったまま熟してしまったり、割れてしまったり、鳥に食べられたりと、栽培の苦労は多々ありますが、農薬を使わずにアテモヤ栽培に挑戦しています。
かんな農園
品種によって表面の突起物も様々です。こちらは「ジェフナー」というアテモヤの中でも甘さを感じる品種。
アテモヤ
チェリモヤに似て突起物がなく、指で押したような凹み模様が特徴的な品種「アフリカンプライド」。
アテモヤ
濃厚でクリーミー、ジューシーな甘味の中に酸味もほどよくあってバランスのよい食味。

こちらはジェフナーに近い品種で大きくなるアテモヤだそう。その大きさは、直径11センチにもなるビッグサイズ。
アテモヤ ピンクマンモス
収穫を終えた春先には、強い枝を育てるため細々とした枝や葉を切り落として剪定します(春剪定)。切った枝からは新しい枝が育ちます。
アテモヤの木
残していた新しい枝を十分成長させたら、その枝を短かく剪定します。その枝からまた枝が伸びるので、この枝に花が咲くようにします(夏剪定)。
アテモヤの木剪定
(写真提供:かんな農園)

剪定しながら次々に成長し横へ広げる枝、その生命力に驚かされます。
アテモヤの木剪定②
夏の剪定を終えた枝から約1カ月後、アテモヤの花が咲きます。なんともユニークな形です!
アテモヤの花
(写真提供:かんな農園)

一つひとつ手作業で人工授粉を行いますが、アテモヤの花は一日で咲き終えてしまうため、この時期は毎日花を探しながらの受粉作業。その後、約5~6ヵ月かけて肥大していきます。
アテモヤ
(写真提供:かんな農園)

12月頃から収穫できますが、年明け1〜2月の果実は格別においしいとのこと。
アテモヤ収穫
(写真提供:かんな農園)

漢那さんが育てるアテモヤは大ぶりで、そろそろ収穫時期かと思われる果実も「もう少し大きくしたいな」と収穫時の大きさにこだわります。果実の中には黒豆のような種がたくさん入っているため、小さいと種ばかりで果肉が十分に味わえません。「ジューシーな果肉をしっかり味わうためには、大きな果実に育てて、おいしいアテモヤを提供していきたい」と言います。
アテモヤ
「全国の方々に美味しいアテモヤを味わってほしい!沖縄のアテモヤをみんなに楽しんでほしい!」との思いで、昨年インターネットを通じたクラウドファンティングに挑戦。全国から支援を得て、かんな農園オリジナル化粧箱を作成しました。アテモヤの螺鈿(らでん)が入った琉球漆器風で、冬の贈り物として喜んでもらえるよう、準備は整いました。
かんな農園
果樹栽培の傍ら、独自性のある写真や動画を公開し、SNSをフル活用しています。全国に向けて積極的に情報発信をすることで、農園の認知拡大にもつながっています。

【アテモヤの食べ頃の見極めについて】

収穫時の果実は黄緑色をして固いので追熟させます。室温20度で4~6日、15~17度で5~8日、追熟すると表面の突起物が黒茶色に変わります。指で優しく押した時に、少し柔らかさを感じる時が食べ頃。熟しすぎると甘さはありますが、ザラザラした食感が残るため美味しさが半減してしまいます。果皮が茶色くなる前が食べ頃で、見た目より持った時のほどよい柔らかさが目安です。
アテモヤ果実
皮に近い部分は洋ナシをまったりさせ、少し柿を思わせる風味も。種の周りはライチのようなくにゅっとした食感。糖度はおよそ20〜25度、マンゴーの一般的な糖度が約15度、メロンは約13度と言われており、他のフルーツより糖度が高いのが特徴です。
アテモヤ
「レモン果汁をかけて食べるのもおすすめですよ」と漢那さん。爽やかな酸味が加わって、すっきりした甘さに変わりおいしいさが増します。
アテモヤ果実
一般的に半分か4分の1にカットし、スプーンですくって食べますが、薄い皮を剥いてひとくち大にカットすることで食べやすくなります。カットした果実を凍らせてシャーベット状にしてもおいしいですよ。
アテモヤ
冬の時期に楽しめる南国フルーツ「アテモヤ」。この見た目からは想像がつかないとろけるような甘さをぜひ味わってみてください!一度食べたらやみつきになりますよ!

沖縄県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエプロの齋藤珠美でした。

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