まつのベジタブルガーデン

佐賀県伊万里の梅はがばいよか梅(ばい)

まつのベジフルサポーターレポート

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧です。

今回は今年2月から取材を続けてきた梅農家の集合体「いまり梅加工研究会」の方々をご紹介します。
梅
10月なのに梅?と思われる方もいるかもしれませんが…今年収穫した梅で作った梅干しを販売する時期がまさに10月なのです。
 
佐賀県伊万里市は隠れた梅の名産地。国営土地改良事業で開発された総面積45ヘクタールの梅団地があります。広大な梅林は西九州最大です。梅まつり
(2月中旬ごろの梅団地パノラマ写真)梅
見渡す限りの梅の木々は圧巻です。毎年2月に6500本もの梅の花見を目当てに、多くの人がこの伊万里梅園・藤ノ尾に訪れます。2月下旬には「梅まつり」があり、子どもから大人まで楽しめる梅の種飛ばし大会などもあり賑わいます。
梅
伊万里市内には梅園が4ヵ所あり、梅部会員は81名。伊万里梅園・藤ノ尾の6500本の梅の木は、43名の方々が管理しています。梅農家の経営安定とオリジナル梅加工品販売を目指し、2002年に梅部会女性部から「いまり梅加工研究会」が発足しました。(下の写真は発足当時の写真)
梅加工研究会
今回取材したのは、発足当時から「いまり梅加工研究会」の会員で、現代表の木須景子さん。毎年6月には梅干し作り教室で講師を務めています。
梅
背後に広がるのは、ずらりと並んだ天日干しの梅(7月中旬)。木須さんは「梅干しは干すから、梅干しで、液体で漬け込むと梅漬けです」と語ります。私は2年前にこの言葉を聞き、近頃梅漬けを作っては「梅干し」を作った気分でいたので、ハッ!!となりました。木須さんの教室に参加してからは、きちんと梅を干して「梅干し」を作ろう!と心に決めました。
梅
5~6月、梅がたわわに実ります。伊万里梅の品種は和歌山で発見され育種された「南高」が主力で、「小梅」「古城」などがあります。「南高」の熟果の地色は黄金色で、陽光面は赤く着色してとても美しいです。果実の大きさは25グラムほどで、中粒種のなかでも玉揃いが良く、皮は薄く肉厚、核(種)は小さいのが特徴です。

赤みを帯びた完熟果は九州で消費され、青いものは関東で人気があるため出荷先は収穫期によってわけています。今年は梅の収穫期に雨が少なかったため収量が少なく、梅自体の水分も少ないので塩漬けの際に梅酢が出る量が少ないとのことです。
梅
 
さて、7月中旬~下旬に土用干しを行いますが、その様子がこちら。
梅
天日にあてた果実は乾燥し、少ししわがあります。梅干しらしい姿で見るだけで唾液が出てきますね。酸味はクエン酸やリンゴ酸で、食欲を増進したり、消化を促進したり、殺菌作用もあります。昔から梅干しは万能薬として重宝されています。梅干しの原型は中国から伝わり、梅を塩漬けして干して作る「白梅(しらうめ)」というのが原型ではないかと考えられています。今の梅干しは日本で完成したものなのです。

7月中旬、「いまり梅加工研究会」の梅干し作りの現場にお邪魔致しました。こちらは、JA伊万里の建物で梅部会の梅を干す作業場です。
梅
広くて頑丈なハウスの中に梅干し用の棚が並んでいます。その広さに驚きましたが、なによりも熟した梅の芳香がフワ~と漂い、幸せな気持ちになりました。
梅
大きな水槽には全て梅の果実が漬け込まれています。ちょうど梅を干す作業の中間地点、土用干しの天地返しを行っていました。
 梅
三日三晩の土用干しは果実を反転させながら天日乾燥を行います。天候の調子や梅の乾燥具合を確認しながら、良い塩梅のタイミングを見計らいながら行います。
梅
ネットと板で梅の果実を挟み「せーの!」と息を合わせて2人で返します。
 梅
見学している私もドキドキして息を潜めていました。今年は収量が少ないとはいえ、梅干し用の梅の果実は総量400キロ、ひとつひとつ手作業で行いますから労力は図りしれません。
梅
 「いまり梅加工研究会」は50〜80代の女性18名で構成されています。
梅加工研究会
この日は小梅の梅干し本漬けの日でした。氷砂糖、シソを計量するもの、梅を容器に入れるもの、シソを容器に入れるもの、梅酢を容器に入れるもの、蓋を閉めるもの‥‥、作業は全て分担して効率的に行います。
梅
容器にシソと梅を交互に入れ、梅酢を容器の上までひたひたに入れます。
梅干し
梅酢を入れた瞬間、シソの色が発色し梅が美しい紅色に染まっていきます。
梅
梅干しはこの本漬けのあと2~3ヵ月間漬け込んで完成です。ちょうど今日、10月1日から今年収穫した梅で作った梅干しの販売が始まります。伊万里梅で作った減塩の梅干しは口当たりがやさしくまろやかで、旨みのある甘酸っぱさが特徴です。
梅干し

実は、「いまり梅加工研究会」のオリジナル加工品販売は梅干しだけではありません。2006年度に、『伊万里市21世紀市民ゆめづくり計画支援事業』(市民みずからの夢を叶えるための支援)のサポートを受け、青梅サイダーや紅梅サイダーを開発。
梅サイダー
梅ジャムや梅ペーストなどもあります。梅ジャム
梅のシロップ煮は、旨みのある甘味で柔らかく食べやすいです。お茶請けに最適です。
梅
イベント出展での直接販売に加え、ふるさと納税返礼品やJAギフトに採用されるなど、積極的に梅のオリジナル加工品の販売とPRに取り組んでいます。
梅まつり
こだわりは、梅の実の選果をしっかり行っていること。伊万里の梅は果皮が綺麗と言われますが、まさに厳選した果実を使うことで品質を保っているため、年々人気も向上しています。「伊万里の梅がほしかっ!!と言われるように、もっと有名にしたい。ブランド力をつけていきたい」と、木須さんは力強く語ります。

メンバーが集まると会議が進まないぐらい楽しくて仕方がないと、会員の方が話されていたのが印象的でした。『三人寄れば文殊の知恵』、人が集まれば良い案や素晴らしい商品などの開発につながると実感しているそう。「いまり梅加工研究会」の新たな梅加工商品が出来るのが待ち遠しいですね。

佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスター前田成慧でした。

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