まつのベジタブルガーデン

青森県八戸の夏の風物詩、伝統野菜「糠塚きゅうり」 

まつのベジフルサポーターレポート

みなさま、こんにちは!青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑(かけはた)睦子です。

東北もいよいよ梅雨入りしました。偏東風(やませ)の影響により作物の育ちにくい気候にありながらも長く細々と守られてきた八戸の伝統野菜「糠塚きゅうり」を紹介します。


藩政時代、参勤交代の途中で種子を持ち帰ったとされ、当時、野菜の供給を担っていた青森県八戸市糠塚(ぬかづか)地区に植えられたことが始まりと言われています。十和田市に住む私は、きゅうりの名前こそ知ってはいましたが食べたことがなく、野菜ソムリエになってから初めて味わった野菜の一つかもしれません。

今回、八戸市農林水産部農業経営振興センターを訪ね、所長の石丸隆典さんに詳しく話を聞くことができました。昭和30年代頃までは、八戸市できゅうりと言えば糠塚きゅうりのことを指し、中心市街地に隣接する糠塚地区を中心に栽培され食べられていましたが、白イボ系の細身のきゅうりの登場により一時は店頭から姿を消してしまったそうです。そんな中でも自家消費用や朝市での販売用にと代々自家採種、生産していた方がいました。さらに、最近は昔懐かしい味が見直されていることから「八戸伝統野菜糠塚きゅうり生産伝承会」が設立され、その形質の伝承や生産振興を図っています。

「生産伝承会」に加入している方は現在9名、種子は糠塚地区で唯一生産を継続している金浜一美さんのものを受け継いでいます。

生産振興グループ・糠塚きゅうり技師の外和昌大さん。
露地栽培の畑を見せていただきました。
長さは20センチくらい、太さは直径6~7センチあるでしょうか?一見、石川県の加賀太きゅうりのようにも見えますね。

シベリア系在来種の糠塚きゅうりは、ずんぐりとした短太でイボは黒く、果皮は黄緑色をしており、熟成とともにメロンのようなネット模様が現れて、金褐色になるのが特徴です。

露地ものは4月に播種・移植後、今年は5月20日頃に定植し、収穫は6月後半から始まり、8月まで出回ります。

全ての花に実が着くことなく、病気にも弱いため慣行栽培が主ですが、このストレスが糠塚きゅうりの特徴でもある苦味を強くしているそうです。

長さ20センチ、500グラムを基準に青果市場に出荷します。ちょうど今が走りで、初物がいただける時期です。

さて、石丸所長さんから、八戸中心街にある屋台村「みろく横丁」で糠塚きゅうりが食べられると聞き、早速行ってみました。 

糠塚きゅうりはまだ早いよ!と言われましたが、見つけました!旨味処「あんど」。「安心・ほっとする」という意味の名前のお店です。

皮を剝き好みで種をとり、味噌を付けて食べるのが一般的ということで、白みそとマヨネーズが添えられて出てきました。

食感はシャリシャリとしてジューシー。ほどよい甘みがあり、苦味というよりは独特の渋みが後から追いかけてくる感じがします。なんだか子供のころに食べたような懐かしい味がしました。味覚は育った環境や遺伝子、体調によって変わると聞いたことを思い出しました。苦味を美味しいと感じるかは人それぞれですが、八戸の方たちが「暑い夏はやっぱり糠塚きゅうりだ!」という意味が分かるような気がしました。これが伝統野菜なんですね。「良薬は口に苦し」ぜひ一度食べて苦味を体感してみてください。

ハウスものの糠塚きゅうりも見せていただきました。露地物とは違い、色は白くて苦味も少ないそうです。半白きゅうりのようですね。

糠塚きゅうりは冷やして皮を剝き、種を取り味噌を付ける定番の食べ方の他に、酢味噌のきゅうりもみや漬物、チャンプルーがおすすめとのことです。 
祖母がよく作ってくれた焼き鯖を加えた酢味噌和え。
鶏肉詰めの煮餡かけ

ごま油で炒めた冷製中華甘酢。

体を冷やしすぎないよう、みょうがやしょうが、唐辛子などを加えてみました。

きゅうりに含まれるカリウムは、血圧を正常に保ってくれたり、塩分の排出を促し、腎臓の働きを助け、デトックス効果も期待できます。また、最近注目されているフィトケミカルといわれる苦味成分には抗酸化作用も期待され、気分をスッキリさせたりストレスを和らげてくれます。

今後、若手生産者がさらに増えて、この糠塚きゅうりを後世に伝え続けてくれることを願っています。

青森県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーの欠畑睦子でした。

 

 

 

 

 

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