まつのベジタブルガーデン

静岡県つば広ハットをかぶったセレブ!「クラウンメロン」

まつのベジフルサポーターレポート

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実です。

フルーツ王国山梨で生まれ育った私ですが、桃や葡萄と同じくらい大好きな果物があります。それは「メロン」。そこで大好きなメロンを求めて、静岡県袋井市に向かいました。温暖な気候で、肥沃な土地と豊かな清流を有する静岡県西部の4市町(袋井市・磐田市・掛川市・森町)は温室メロンの最高峰「クラウンメロン」の産地。静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所があり、年間通して一貫した生産・販売体制により運営され、国内でも屈指のおいしさと出荷高を誇るクラウンメロンを生産しています。

今回、袋井市にある安井農園を訪問し、メロン栽培への情熱とチャレンジ精神旺盛な安井孝政さんにお会いしました。
安井孝政さん
安井さんは14棟のハウスを管理し、ハウスごと収穫時期をずらしながら周年栽培を行っています。
ハウス
一般的なハウスはビニール素材ですが、クラウンメロンはガラスやアクリルの温室で栽培されています。ガラスやアクリルの温室は太陽光線の透過率が高く、光を好むメロンの栽培に適しています。安井さんはアクリル温室を使い、乱反射する特性を生かしてハウス全体に光が行き届くようにしています。南向きの面が大きくなってるスリークォーター型のハウスは、太陽の高度が低くなる冬季でも太陽光がたくさん入るのです。
スリークウォーター型
こちらは収穫が終わったばかりのハウス。
収穫後のハウス
収穫が終わったハウスはすぐに片づけを行い、水蒸気殺菌を行います。約80分かけて蒸気のみで行う殺菌方法で、30年間使い続けている土でも連作障害は起きません。
蒸気消毒
その後は土づくり。土を練って表面を平らにします。
手作業の土づくり
こちらは苗を育てているハウス。静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所では、組合員が自家採種した種を販売、その中から自分に合ったものを選んで購入します。これによって、1年中安定した品質を保つことができます。クラウンメロンの生産者は約250軒くらいいますが、各々が長年の知識と経験を活かして様々な種を使いこなしながら周年栽培を行っています。
苗の赤ちゃん
播種から収穫までは100日ほど。最初の約20日間はこちらのハウスで生育し、定植を待ちます。「苗づくりは半作」と言われるくらい重要な作業。デリケートな苗は、ハウスに運ぶ際にも雨や風に注意が必要です。
苗生育中
次のハウスには受粉前後のメロンたちが並んでいました。
 
定植から20日を目安に受粉を行います。メロンは雄花と雌花が1つの花の中にあるため、ブラシを使って行います。昔はミツバチを使っていましたが、最近は全て手作業だそう。交配から収穫までは約50日!まだまだ中盤です。
受粉は手作業
ハウス内の冷暖房の適正管理と水やりのタイミングは重要なポイント。冬は苗の横を通った配管から暖気を出し、夏はハウス上部のダクトから冷気を出します。窓の開閉も可能なので、年間通して午前中が30度前後、午後から夜間が20度前後になるよう徹底管理。クラウンメロンは限られた土量の中で栽培する「隔離ベット栽培」という方法がとられ、メロンの根を地面と隔離することで、水の量をコントロールします。
隔離ベット栽培
水はあげ過ぎてもあげなさすぎてもダメ!とのこと。安井さんは、根の広がりをイメージしながら水をあげているそうです。
根をイメージしながら
次のハウスに行くと、子メロンが育っていました。木には複数個のメロンが育ちますが、クラウンメロンは1本から1個しか収穫しません。複数個できるメロンから一つだけを選抜し、その実にすべての養分が集中するようにします。これを「一木一果(いちぼくいっか)」と言います。
子メロン
また、木は2メートル弱の高さにとどめ、葉も15~17枚程度に合わせるようにして、栄養を実に凝縮させます。
木の高さは2メートル弱
しかし、ここまで徹底した管理を行っているのに、いくつか花が残っている木がありました。その理由を尋ねると、「害虫を食べてくれる益虫の餌用にいくつか残しているんです」とのこと。「天敵栽培」はできるだけ農薬を使わないための工夫です。

次のハウスでは、玉吊りされたメロンを見ることができました。交配してから約15日で玉吊り作業を行います。これはツルの形を悪くしないため。本当に丁寧に育てられています。
玉吊りメロン
ここからは成長期。少し水をやって甘やかし、外皮より中の実の成長が早くなるようにします。そうするとひび割れがおき、それを実自身が修復しようとすることで独特な網模様(ネット)ができます。ネット系のメロンは、ネットが細かく入っているものが美味しいとされるため、網模様を細かくするよう注意しながら育てます。

交配して約30日。実に傘がかけられています。これは見栄えのためだけで、極力日焼けをさせず白い肌を保つための作業です。まるでつばの大きな帽子をかぶったセレブのよう!
セレブメロン
育ってきたメロンの先に1枚だけ葉を残し、その緑色が薄く黄色がかってきた頃が収穫のタイミング。
収穫のタイミング
大切に育てられた安井さんのメロンには、生産者番号「716」のシールが貼られます。安井農園のクラウンメロンである証です。
正真正銘安井農園のメロン
しかし、時折こんな形でお尻が割れてしまうものも。
尻割れメロン
しかしこれは中身が美味しく熟した証拠です!残念ながら出荷はできませんが、自宅用やご近所へのおすそ分け用にまわします。
複数の尻割れメロン
「一番恐いのは突風と雷です」と話す安井さん。よほどの突風でない限りハウスが倒壊することはないでしょうが、コンピュータで栽培管理を行っているため、雷で故障してしまうことが脅威だそう。また、「生産者とは違った目線から、新しいアイディアや販売&PR方法などの意見を聞きたい!」と力強く語ります。愛情をたっぷり注いで育てたメロンを多くの人に食べてほしい!という熱い思いが伝わってきました。

さて後日、松野貞文社長と静岡県のまつのベジフルサポーターの小櫛香穂さんと共に安井農園を再度訪問。
苗づくりハウスの松野社長
周辺の田んぼの土を使って栽培を行っていること、1つのハウスには1列70本の苗が4列並べられてること、1年中同じ温度で管理しているため夏でも冬でも約100日で収穫になること…など、松野社長も興味深く安井さんの話に耳を傾けていました。
香穂さんも熱心に
試食メロン
メロンの試食では、その美味しさに松野社長も思わず頬張りました!
松野社長試食中
静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所では、生産技術や品質の向上を目的とし、年4回品評会を開催しています。品評会には丹精込めて育てられたメロンが多数出品され、各地区の予選を勝ち抜いた40軒(1軒6玉)のメロンを糖度、ネット模様・色・ツルの状態などの外観、果肉の厚さ・色・肉質のきめ細やかさ・香りなどを点数化して評価します。

今年8月の品評会では、安井さんが育てたクラウンメロンが見事入賞しました。
入賞メロン
(写真提供:安井農園)
「水・温度・光の当たり方、どれもシンプルですが、そこに腕の差が出ます。思いやりの差ですかね」と語る安井さん。その想いがこのように美しいクラウンメロンを作り上げ、今回の受賞につながったのでしょうね。

ところで、「メロンの日」があることを知っていますか?全国19のメロン産地が一同に集結した「第2回全国メロンサミットinほこた」(茨城県鉾田市)にて、毎月6日が「メロンの日」と定められました。これは、数字の「6」がツルのついたメロンの形に似ているという理由から。静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所でも、毎月6日を「クラウンメロンの日」とし、この日に合わせて試食会や即売会などを開催しているので、ぜひチェックしてくださいね。

山梨県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエプロ・フードツーリズムマイスターの村上由実でした。

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