まつのベジタブルガーデン

佐賀県こだわり土耕栽培のイチゴ「さがほのか」

畑の社会見学

こんにちは。佐賀県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエ・食育マイスターの前田成慧です。

佐賀のイチゴといえば、もちろん「さがほのか」!!平成27年度の農林統計によるとイチゴの生産量が全国8位の佐賀県ですが、「さがほのか」の栽培面積は「とちおとめ」に次いで全国2位。佐賀県内ではイチゴの96%をさがほのかが占めるほどの有力品種です。西日本では西の横綱と呼ばれるほど「とよのか」が主流でしたが、熊本や南九州でも栽培が広がり「さがほのか」への品種転換が進んでいます。

「さがほのか」は平成3年に佐賀県の農業試験研究センターで独自に交配し、平成13年に品種登録されました。果実が大きく色鮮やかで果汁も豊富な「大錦」と、豊かな香りと食味が良く多収性の「とよのか」を掛け合わせ、選抜・育成して作られました。「さがほのか」は酸味が少なくすっきりとした甘味があり、果肉はさっくりと柔らか。ほのかに花のような香りがあるのが特徴です。外観は光沢のある鮮やかな赤、中は白い果肉をしています。一般に流通している平均サイズは25g前後。大きくても30gほどのやや小ぶりの品種ではありますが、形は円錐形で揃いが良く、果汁が多く甘味と酸味が調和したバランスのよいイチゴです。

今回、佐賀県を訪れた松野貞文社長に同行し、さがほのかを生産されている「しもむら農園」様のいちごハウスを視察しました。

農園主の下村宣弘さんは、米、麦、大豆を中心に30年続くイチゴ栽培の後を継がれ、600坪の敷地で「さがほのか」のみを完全土耕栽培されています。

「さがほのか」は形が良く統一性があり、比較的収穫量が多くて日持ちが良いのですが、イチゴは実(実床)が柔らかいので輸送に向いていないのが難点。そのため、佐賀県内の直売所やスーパーなどにほとんど卸しているそうです。

松野社長も「実がいっぱいついている!」と、他のイチゴに比べ実の多さに驚いてらっしゃいました。これでも摘果しているそうで、収穫量の多い品種ということがわかります。

「しもむら農園」では12月上旬から5月まで出荷しています。他のイチゴにない「さがほのか」の最大の特徴は、春になり暖かくなってくると甘味や香りが増していくということ。一般的に3~4月が一番美味しい時期になりますが、「しもむら農園」では微生物を土壌に活用しているため、地温上昇しているので2月~4月が特に美味しい時期とのことです。

下村さんは高設栽培ではなく、昔ながらの「土耕栽培」のイチゴづくりにこだわっています。苗づくりや土づくりを独自に工夫され、毎月葉を樹液分析に出し、イチゴの苗がどんな状態か健康状態をチェックしています。また、美味しいイチゴをつくるには日照が大事。イチゴの赤い色はアントシアニン系の色素によるもので光にあたることで着色が優れてきます。葉が実にあたる光を遮るのを防ぐため、鉄線で葉を持ち上げていました。
  
土耕栽培は苗が低く腰をかがめながらの作業となり労力がかかりますが、味のしっかりした濃いイチゴを作るためのこだわりです。「しもむら農園」では平均25〜30グラム、ほとんど採れない5Lサイズの40グラム以上のイチゴも採れるそうで、今年最大の大きさは85グラムとビッグなものも育っているそうです。素晴らしいですね!

作物は、土づくりが一番大事ということを改めて学ばせて頂きました。ハウス内を見渡すと、イチゴの畑の中にひときわ大きな作物が一緒に生えています。モグラの被害を防ぐためにジャンボにんにくを植えているのだとか。一昨年の試みではあまり効果が出なかったそうですが、昨年の夏、農薬を使わないで土を殺菌するために太陽熱土壌殺菌法を行ったところ(夏のハウスにビニールを張ったまま)、ハウス内が灼熱地獄になりモグラが今年は出なくなったと話されていました。松野社長も、偶然モグラがいなくなったことを「一年に一度しかできないことを試し続けることが大切なんだ。根気よく作物と向き合うことが農作物の栽培には必要」と感心されていました。

写真はいちご畑の中のジャンボにんにく。佐賀県には「もぐら打ち」と呼ばれる伝統行事があり、小正月の1月14日に子供たちが家々を回り、掛け声をかけながら竹に巻いた藁で家先や田畑の地面を叩くものです。元来、田畑を荒らすモグラの被害を防ぐ行為が、五穀豊穣、家内安全を祈る行事となったものです。この「モグラ打ち」を生産者もご存知で、九州地方でも田舎特有の行事のようです。

ところで、「さがほのか」のイメージキャラクターは、着せ替え人形でお馴染みの「りかちゃん」が起用されています。清らかで可愛いイメージがさがほのかにぴったりと、消費者や市場関係者の間で人気です。りかちゃんの模様のあるピンク色の「さがほのcar」というPRカーもあるほど。佐賀県はさがほのかにぞっこんなのです。

今回、佐賀県の視察に松野社長に同行し、農家の方の日々の努力とこだわり、農作物に対する愛情など感じとり、野菜・果物と向き合いながらどのように伝えていくのかもっとしっかり考えないといけない。と、気持ちを新たに致しました。お忙しい中視察を受け入れて下さいました、「しもむら農園」の下村さん、どうもありがとうございました。
しもむら農園

佐賀県のまつのベジフルサポーター・野菜ソムリエ・食育マイスター前田成慧でした。

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