松野貞文の全国視察レポート

長崎県「ながさきブルーベリーあいあいの雫」を訪ねて

長崎県へとやってきた松野貞文社長は、大規模なブルーベリー農園を訪問しました。今回は新しい栽培技術で「ながさきブルーベリーあいあいの雫」をつくる「よかばい柚木農園」様をご紹介します。佐賀県のまつのベジフルサポーター、野菜ソムリエ、食育マイスターの前田成慧さんのレポートです。


佐世保市潜木町にある「よかばい柚木農園」は、長崎県初の本格的な先進栽培技術(点滴ポット栽培)を導入したブルーベリー農園。

訪問時にはちょうど可愛らしいブルーベリーの花が開花しておりました。

ご案内いただいた渋谷進さんによると、ブルーベリーは酸性土壌を好み、土の乾燥を嫌います。日本には残念ながらブルーベリーに適した土壌条件(保水性が良く、通気性・保肥性が高く、酸性土壌)を満たす天然の土地が少なく、これまで生産者はいろいろ工夫してブルーベリーを栽培してきました。

新たな栽培方法の点滴ポット栽培とは、点滴潅水チューブを各鉢4か所設置し、PH、EC(肥料の濃度)を測定しながら配合した液肥を、夏は1日に7~8回、冬でも1回は施し、生育に適正な環境を整える栽培方法です。

土ではなく、樹脂を発砲させて作ったオアシス(生花用給水スポンジ)を鉢の中に敷き詰めて栽培しているので、病気の発生が少なく、軽量で多量に水を吸水するオアシスは、培土の再利用も可能で環境に優しいのです。また全て温室栽培であり、鳥獣や病害虫による被害を抑え、低農薬に努めているとのこと。

また、収穫時も手袋を使用し、収穫用の籠なども使用するたびにアルコール消毒しているそう。守るべき項目や留意しなければならない項目などを目に付くところに掲示しており、農作業の衛生管理を徹底されています。

さらに、「食材の安全確保」と「周辺環境や生態系と調和のとれた農業生産活動の確保」、「作業員の労働安全の確保」を目指し、201612月にJGAPを取得。農業生産工程管理に基づく品質保証に取り組んでいます。

「ハウス34棟、11品種のブルーベリーを9000鉢栽培しています。広さにして約3万平方メートルあり、1坪に1鉢あることになります」と、渋谷さんは広大な敷地を案内しながら教えて下さいました。

「これだけ大規模なブルーベリー農園は今まで見たことない」と松野社長も感嘆。「ハウスだと雨避けにもなるし、コンスタントに収穫できるのでは?」と質問を投げかけると、「ブルーベリーの収穫は雨にも左右されます。露地栽培に比べ、成長も早くて生育も良好なので、ハウス栽培のほうが収量が多いと思います」と渋谷さん。

「収穫の手際の良さによっても差が出てきそうですが、能力制ですか?もしくはノルマ制でしょうか?」という松野社長の質問に、渋谷さんは「時給制です。収穫の時期だけ地元の方が45名ほど来られて、朝6時から10時まで収穫を行います。能力制やノルマ制にすると繊細なブルーベリーの果実が傷ついてしまうので、収穫量よりも丁寧に扱って収穫するほうを優先しています」と言われ、「なるほど‥」と頷く松野社長。

農繁期は人が増員されるものの、普段はパートの方が3名で9000鉢のポットを管理しているというから驚きです。

今回の視察は5月上旬で、ブルーベリーは全て未熟果。今年は寒さで10日ほど遅れているとのことで、松野社長の視察では色づいたブルーベリーを見ることができず…

でも、6月上旬に再度訪問して見ると、鮮やかに色づいた鈴なりのブルーベリーが迎えてくれました!

「よかばい柚木農園」では11品種のブルーベリーを収穫期をずらしながら5月中旬から9月中旬まで収穫・出荷しており、現在(6月上旬)出荷している6品種を全て見せて頂きました。

ブルーベリーは品種によって区別して販売することはなく、品目名『ブルーベリー』として販売されるので、味の個体差や品種による風味の違いが強く出ないよう、高品質なブルーベリーを選別し生産しています。確かに一つひとつ食べ比べてみると酸味や甘味、香り、食感などの違いはありますが、一緒に並べたり混ぜたりすると分かりませんでした。

ハウス内では品種ごとに鉢を整列させており、一列ずつ同じ品種を収穫するようにしています。よってパッキングした際は同一品種が入ることになります。ブルーベリーは様々な品種をともに育て、交雑したほうが果実の実りが良いそうです。

「ながさきブルーベリーあいあいの雫」の果実は大きいため、食感も甘味もダイレクトに口の中に広がり、食べごたえがありました。また、ほのかな香りと果肉は柔らかくジューシーで、酸味の少ない上品な味わいでした。

ブルーベリーは追熟しないので、完熟したものを収穫します。直径12ミリ以上のものを収穫し、選果場でひとつひとつ丁寧に選果され、サイズを分類、計量し、パックに詰められます。

手袋、エプロン、キャップを身につけ、徹底した衛生対策を行うことも「安全・安心のブルーベリー」を届けたいから。

朝収穫したものをトラックで直接大阪の市場へ運びます。。外気温との差が6〜7度あると露がつくので、なるべく外気温差が生じないようにして、20度で設定したコールドチェーンで輸送。翌朝の競にかけ、収穫した翌日の午前中には青果店の店頭に並ぶのですから、流通はスピーディーで、鮮度保持も徹底されています。

「ながさきブルーベリーあいあいの雫」は温度差が生じる飛行機での輸送はできないため、残念ながら東京ではわずかしか流通していません。「宅急便や直販よりも、市場へのトラック配送の良さはコールドチェーン(生鮮食品を輸送する際に途切れることなく低温に保つ物流方法)で、果実の傷みが消費者に届かないこと」と語る渋谷さん。消費者に美味しい状態のままお届けするため、あえて東京市場を主要な販売先にしていないのもこだわりなのです。

「ブルーベリー栽培において、市場に出す卸売りか、観光農園か、その違いは収穫の手間」と、渋谷さん。これほどの量のブルーベリー‥‥一粒一粒人間の手でしか収穫できない上、果実が繊細で、収穫した瞬間から劣化していってしまう果物。そんな繊細なブルーベリーを愛おしそうに見つめる渋谷さん。

「収穫の楽しみはほんの数か月だけ、今年は26トンを出荷予定です」とのこと。栽培から収穫、梱包まで、全ての行程で手間をかけることが、お客様の笑顔につながるのです。

5月中旬~9月中旬の3か月間だけ楽しめる「ながさきブルーベリーあいあいの雫」。ジュースやジャム、ブッセ、ドライフルーツなどの加工品もあり、渋谷さんのおすすめは「ブルーベリー梅酒」だそうです。お取り寄せはこちらからどうぞ

旬を迎えたブルーベリー。その美味しさをより多くの方に楽しんでいただけるよう、まつのも高品質な国産ブルーベリーの流通に全力で取り組んでまいります。

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